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【ミリしら超感想】『アイナナ Second』第11話 躍進を挫く影 「守りたい場所」のために

2020年12月6日

 

引用元:https://idolish7.com/aninana/story/second/?p=1332

期限切れの重圧から歌が歌えなくなってしまったRe:valeの百。それを取り巻くアイドルたちの努力虚しく、まだ復活の糸口は掴めていません。

共に同じステージを彩る仲間の窮地に心配を向けつつも、最優先すべきは自分たちの活動です。IDOLiSH7もまた全ての問題を解決し切ったわけではなく、目の前のことに集中する必要がありました。

視点は変わり、再びゼロアリーナのこけら落とし公演に向けて邁進するアイナナの物語へ。

謎多き伝説のアイドル「ゼロ」も話の中心へと関わり出す第11話。それぞれの「守りたい場所」への想いが交錯し始めるエピソード。今回もその内容を紐解いて行きましょう。

落書きの正体は?

Re:valeを苦しめる、ポスターへの悪質な落書き。彼らがゼロの曲を歌うことを良しとしない何者からかのメッセージは日に日に過激さを増して、世間を騒がせる一大ゴシップにまで成長していました(陸くん、「ゼロアリーナこけら落とし公演」でツイート検索してるみたいだけど、あんまりそういうことしちゃ駄目だよ)

「Get Back My Song」
普通に考えればゼロ本人の行動であるとするのは不自然なその落書きも、執拗に続けられると次第に「本物なのではないか?」と疑い始める人も現れます。

たとえ99%の人が「本人でない」と考えていても、世の中に絶対はありません。ないことを証明するのは難しく、逆にあることは状況証拠の組み合わせで簡単にでっち上げることが可能です。

無用な考察が行われて陰謀論が囁き出されると、そちらの方を信じる人たちはこぞって増大を始めます。そうして話はどんどんと膨れ上がり、根拠のない妄想が世論の一部にはびこってしまうものです。

特にゼロはその進退の真実から、関係者からも「そうであってもおかしくない」と思われてしまっているようでした。

ファンの期待に全力で応え続けた彼は、あるライブの後にその多すぎる「夢」を受け止めることができなくなり、心と身体を壊してしまったとのこと。それが直接的な引退の理由へと発展したようです。

誰もが憧れる理想のアイドルだったゼロは、アイナナたちとはまた比較にならないほどの知名度を誇るアイドルだったのでしょう。それもグループではなくソロで活動を行っていたとなると、それだけ圧倒的なカリスマの持ち主だったとも予想できます。

グループアイドルの憂いについては『アイナナ』の物語中で数多語られてきていますが、ソロアイドルはそれを全て個人で背負わなければなりません。他人との軋轢が生じない代わりに、無限に広がる孤独と戦い続けることになる。その負担の大きさは想像を絶するでしょう。

憶測と妄想の果て

以上の事情から、心が壊れてしまったゼロが自身の曲を"奪われる"ことに憤慨して行動している。自分がそうなってまで積み上げた功績を後から横取りされるなど、許されることではないと彼は思っている。このように筋道を立てて考えれば、確かに辻褄は合ってしまいます。

しかしそれも1つの可能性でしかありません。
物的な証拠は今のところなく、断定するには弱すぎる。

身勝手な想像だけで彼が悪事に及んでいると決めつけるのは、それこそゼロというアイドルに対する冒です。

世間に見せる顔の裏側では、人知れず苦悩している時間がある。その事実を知るアイドルたちは、根拠のない話にも揺れ動いてしまう立場です。実体験とリンクする話ほど、人は説得力を感じてしまいもします。

あのゼロも同じアイドルで、同じ人間である以上、時が経てば変わってしまうこともあるかもしれないと、ゼロに憧れる三月でさえ心のどこかでそう思うのです。

劇中では三月が「過去の思い出に縋り、現実を認めようとしないファン」の立場で描写されていますが、果たしてどちらが"現実"を見ているのかはこの時点では分かりません。

もしゼロが何者かの憂さ晴らしに体よく利用されていて、どこかでそれを知る本人が苦しんでいるとしたら。その時は三月のような善良な反応をする者こそが、最後には当事者の心を救うはずです。

「ゼロ」というアイドルの在り方とその真実を巡る物語はまだ始まったばかり。これからこの動向には、より注視して行かなければならないようです。

躍進するIDOLiSH7

第11話は暗い話ばかりではなく、アイナナにとって明るいストーリーも展開されました。第8話で前向きな気持ちを取り戻してから早3週間。ようやく彼らが1つの壁を乗り越える時がやってきました。

2ndアルバムの発売。それに伴ったセンターの再交代。ライブでの大々的な発表。これまでの嫌な空気を払拭するための筋道を演出する準備を、しっかりとマネージャーが考えておいてくれたのです。

あの熱意の籠った激励を機に、変わったのはアイナナたちだけではありません。小鳥遊紡もまた、1つ上のステージへと自身を昇華させられていたようです。

発言には責任が伴い、行動に反映される。仕事人として誰もが見習いたくなる姿勢がそこにはありました(左ハンドルのマニュアル車をあんなにカッコ良く運転できる女性マネージャーはきっと君だけだ…)

内部では全員が納得しているとは言え、センターが変わることはまたファン同士のトラブルを招きかねないこと。そんなこれまでの経緯から予想されるネガティブ要素も考慮して、アイドルたちに新たな道標を示して行きます。

自分の考えを押し付けるのではなく、必要なことは主張しながらも当人の感情を優先するその手腕。落ち着き払ったその態度からは、頼れるマネージャー感が滲み出ます。

アイドルが不調になるということは、彼女の仕事にも少なからず影響します。描写されてはいませんが、彼女も裏で様々な人の意見や苦情を見聞きしていたのでしょう。

陸の意志を尊重して病気のことなどは伏せたまま、今の気持ちを正直にファンに伝える。最も彼らをそばで見ている彼女が毅然と語る"アイナナらしさ”を胸に秘め、彼らはファンと交流するステージへと上がります。

「好き」という一言

ライブのMCコーナーで、センター交代の話を一織の口から伝える。そしてそれを踏まえて、彼らが今どう思っているかをファンにしっかりと語りかける。それが彼らの選んだ選択でした。

一織の宣言に対するファンの反応は、歓声8割悲鳴2割と言ったところ。ライブに来るようなファンは昔から応援している人の方が多いだろうし、半年程度の交代であれば"元通り"を望む人の方が多いのは頷けます。

ですが過去のエピソードではライブ会場でファン同士が喧嘩を始めた(民度が最悪)こともあり、そこからファン離れを生む可能性も否めません。彼らが何を話すかは、今後に多大な影響をもたらす状況に変わりはないのです。

現在センターを務める一織が何から話して良いのか、何をどう言えば丸く収まるのか。考えすぎて固まってしまうのも無理はありません。そんな時に弟の心を解きほぐしてくれる三月は最高にお兄ちゃん。彼もムードメーカーとして"いつもの調子"を取り戻してくれています。

話し始めた一織はまず陸を落として笑いを取り、その後に上げに上げて信頼を得るという正統派な話術を披露。もちろん全て本心には違いありませんが、アプローチのかけ方がロジカルなところは実に一織らしいですね。

「「私は皆さんと同じように…いえ、ここにいる会場の中で。
私が一番、七瀬さんのボーカルが好きです」

そしてやはりファンに刺さるのはこの言葉。"好き"という感情でアイドルを応援する彼女たちもまた、アイドルの"好き"という感情に敏感です。アイドル同士がそういった交流をしていることが伝われば、必ずファンはその気持ちに応えてくれると思います。

そんな一織の言葉に促されるように前に立った陸もまた、最大限に自分の気持ちを表現して行きました。

守りたい場所

ライブとは自分たちを想ってくれる人の"好き"を目いっぱい浴びることができる機会です。

自分を肯定して受け入れてくれる人の気持ちを直接受け取る。それもまた「1億のNOに勝つYES」になり得るはず。

だからアイドルは直接ファンに会うことを望むし、そんなアイドルの活き活きとした姿を見るためにファンは会場に集うのです。

「――ファンの皆さんが大好きです!」

それは屈託のない笑顔で述べる本心。裏表のない「アイナナの七瀬陸」が放つ言葉だからこそ、言葉通りの気持ちがファンの心にも届いて行きます。

「一織も、大和さんも、三月も、壮五さんも、環も、ナギも…」

センター交代という事件によって、多くのファンは「陸に何かあったのではないか」という不安を感じたはずです。

事情を隠していても、漏れ出る負の感情はしっかりと受け手にも伝わってしまう。アイドルがその気持ちを押し留めて覆い隠そうとするほどに、どんどんとファンの間には不安と不信が蓄積されてしまうものです。

そういった状況に置かれた時に全てを隠し通そうとすることなく、できる限りの想いを伝える勇気を持てるかどうか。それがアイドルとファンの関係を良いものに変えるための、1つの大きな分岐点になると僕は思います。

「みんな…みんな大好き!」

それが言い訳がましく聞こえてしまうような人がいるのも事実です。しかし七瀬陸はそうではない。彼の語る言葉の端々からは「もう心配ないんだよ」という100%の気持ちが表現されています。

それが自然にできることが、彼がここまで正しく生きてきたことの証明。そしてその彼を好きになったファンだから、彼からの強き想いを受け取ることができるのです。

「一織にも、他のメンバーにも、ファンのみんなにも、
もう悲しい顔はさせないように、精一杯歌い続けて」

センターに返り咲いた七瀬陸は、半年前の七瀬陸とはもう別人です。様々な苦難を経験し、それでもなお自分からセンターに戻ろうと決意する。そんな強き心を持った少年へと進化しました。

「大好きな、大切な、この空間を守ります!」

IDOLiSH7にとってここが『RESTART POiNTER』。
進化した彼らが送るステージは、今までの以上の熱量を伴ってファンの心に響き渡って行く。

それぞれの決意と思いを解放し、世界一のアイドルを目指して、再び彼らは羽ばたき始めました。

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はつ

『超感想エンタミア』運営者。男性。美少女よりイケメンを好み、最近は主に女性向け作品の感想執筆を行っている。キャラの心情読解を得意とし、1人1人に公平に寄り添った感想で人気を博す。その熱量は初見やアニメオリジナル作品においても発揮され、某アニメでは監督から感謝のツイートを受け取ったことも。

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