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『キンプリSSS』マイソング感想&レビュー 「ベストテン」に合わせて音楽の魅力を振り返ろう(前編)

2020年1月8日

引用元:https://kinpri.com/news/detail.php?id=1075758&artist_cd=KOP3S

いよいよ公開間近に迫って参りました『KING OF PRISM ALL STARS -プリズムショー☆ベストテン-』!

新規映像や新曲を交えながら、数々の名プリズムショー達をまとめて鑑賞できるこの映画。期待が高まりますね。

公開に先立ちまして、今回は『スッスッス』ことTVアニメ『KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-』にて公開された全キャラクターのマイソングを改めて振り返って参ります!

極上のプリズムショー体験を迎える前に、楽曲単位で彼らの煌めきを見て行きましょう!

百花繚乱/太刀花ユキノジョウ

たとえ
舞い落ちる花の如く 
この身、命、朽ち果てようと
息の途絶えるその瞬間までは
踊り続けよう

第2話にて決死のプリズムショーで我々を魅せてくれたユキ様こと太刀花ユキノジョウ。この「百花繚乱」をもって、アニメへの信頼感情を爆発させた方も多かったのではないでしょうか。

ユキノジョウが個人的に好むロックサウンドを基調に和テイストを複合したいわゆる和ロック。プリズムスタァでありながら歌舞伎役者でもある彼の生き様を尊重した疾走感のある一曲に仕上がっています。

軽快な音を奏でる弦楽器の美しさはもちろんですが、この曲でより強く感じるべきは重低音の力強さでしょう。強調されたドラムやベースに加えて、和太鼓の腹の底に沁み渡るような音が曲全体に荘厳な雰囲気を齎しています。

ユキノウジョウにとってPRISM.1は、プリズムスタァとして上がる最後の舞台として始まりました。それをただ美しく艶やかに舞うだけで終わらせて良いわけがない。

内に秘めたる決死の覚悟が、彼の心身を支えていることが音に乗せて伝わってくるようです。特に連続ジャンプを飛んだ間奏部分に込められた熱量は凄まじいものがあります。

常に厳かに鳴り響く重低音に支えられる形で、全ての楽器が踊り狂うように鮮やかに音を奏でて行くのです。採用されている楽器の数が多いにも関わらず耳馴染みが良く、見事な緩急によって太刀花ユキノジョウの心情が表現されています。

歌詞は全編を通してその心情を細やかに謳ったもの。
アニメ本編では与えられ受け取ることを繰り返し、自らが置かれた状況に大きく心を翻弄されたユキノジョウが、その全てを乗り越えて辿り着いた1つの結論。それが曲に乗せられる形で我々の耳に届いてきます。

本作は1曲につき一度のプリズムショーしか行わない形式の作品だったため、楽曲もそのエピソードに完全に適合したものが用意されていたのが大きなポイント。

一話かけてじっくり物語を構築し、その解決を全てプリズムショーに一任する爆発力。『プリティーシリーズ』が根源的に持つ作品の強みを、音楽面でも最大限に活かすことができる作風でした。

そんな中でPRISM.1開幕を任された「百花繚乱」は、正しく"正統派"。これぞプリズムショーと言うべき楽曲を届けてくれました。

特にイントロの冒頭部分は、作品全体の幕開けすら感じさせてくれるもので、最初からマイソングシリーズを通して聴きたくなってしまう魅力がありますよね。

Fly in the sky/香賀美タイガ

さあ今 fly in the sky 翼広げて
自由に羽ばたけ ストリートから空へ

 

「劇場編集版 一章」のトリを務めたストリートの新星 香賀美タイガの「Fly in the sky」は、電子音をふんだんに用いたテクノ調の楽曲。尊敬する先輩である仁科カヅキの「Freedom」に近いテイストが意識されていると感じます。

劇場版『キンプラ』でも(ソロではないものの)プリズムショーを披露してくれていたタイガは、話の内容はもちろん、楽曲のイメージについても大きな注目が集まっていたことと思います。

チャラチャラしたものを嫌い硬派なストリート系を目指すイメージが強い彼でしたが、『スッスッス』では過去の経験から大きな成長を見せてくれました。それに伴い、楽曲もその心境変化が反映される仕上がりに。

ノリの良い軽快なサウンドは、表面的な力強さや壮大さからは程遠いもの。しかし"強さ"とはそうやって押し付けるものばかりではなく、内側から感じさせることもできるものである。それに気付いた香賀美タイガの心情が曲全体によって表現されています。

曲名の「fly in the sky」の通り、空を舞って行くかのような奥行きを感じられる音作りが魅力的で、音の配置が非常に緻密で立体的なのがこの曲のポイント。

その空間を貫いて行くように、タイガの美しく力強い歌声が中心にしっかりと響き渡って行く。この曲は全曲の中でも特に"歌声"の響きにこだわった創りになっていて、強く大きく据わった一本の芯を感じさせてくれるのが心地良い。

楽曲に乗せられた歌詞は、カヅキに向けた強い想いが全力で謳われています。今の彼にとって仁科カヅキという存在がどれだけ大きいものなのかを改めて感じさせてくれます。

そして、劇中では流れていない2番の歌詞で謳われているのは、"皆のためのプリズムショー"を行うところまで自分の心を変えてくれた仲間への感謝の気持ちです。

アニメ本編の彼の行動や心の動きを改めて反芻しながら聴くと、楽曲だけでも心を大きく揺さぶってくれる一曲。そしてこの曲を聴いてからまたアニメを見ると、感動もひとしお。

本作の楽曲は、2番がアニメ本編の心情補完のようになっている曲が複数あり、正に各楽曲のFULL音源を聴くことでアニメが完成すると言っても過言ではありません。劇場サイズで満足している方も、是非FULLを聴いてみてくださいね。

Orange Flamingo/十王院カケル

O le le Orangeに染めろ
O le le 俺ら Non No faction
きっと待ってる 奇跡のWorld
Go Go 翔ける High up

天然ガスが出たァー!
トップテンでも中間発表2位と、ベスト1候補にも挙がる皆大好き十王院カケルの楽曲「Orange Flamingo」は、テンションアゲアゲでどこかバブリーなクラブミュージックに。

壮大な楽曲を思わせる厳かなイントロから、「そんなの面白くないじゃん?」とも言いたげに弾ける歌い出しが最大の特徴でしょうか。

当番回である4話では個人としての感情の動きよりも、十王院財閥の御曹司として振る舞う社会派な一面を強く濃く見せてくれた彼。

そのエピソード中で語られた「プリズムショーが好き」という強くまっすぐな気持ち。愛があるなら確かめてみたい。そして俺も翔びたい。「カケル」として振る舞うことでいつか「一男」とも向き合えるかもしれない。

「Orange Flamingo」はそんな心情を内包した、ただ見る人を楽しませることに特化した一曲で。彼が魅了されたプリズムショーその物を体現するための楽曲です。プリズムショーの根源的な魅力を火の玉ストレートでぶつけてくるこの曲及びショーをベストに選ぶ人が多いのも頷けます。

ノリノリなメロディに加えて、合いの手が盛り盛りに挿入されていることで「皆でこの時間を楽しみたい」という気持ちがこれでもかというほど明確に伝わってくる仕上がり。何も考えずにただただ楽しいと感じられる。それがこの曲全体に備わった本懐でしょう。

その楽曲の内容とは対照的に、謳われている歌詞は十王院カケルの葛藤を強く描いたもの。まだ成長の途中であり、自身との折り合いがしっかり付いているわけではないカケルの心情が歌詞の言葉には込められています。

そしてそれがあるからこそ、サビに至って膨らむ「今は今を楽しもう」という気持ちが、音と歌声に乗ってより尊いものとして伝わってくるのです。難しいことは沢山あるけれど、それはそれとして。その割り切りがエンターテインメントの存在意義とも言えます。

FULLサイズでは、十王院カケルがそう思えるようになった理由…前を向かせてくれる仲間達への気持ちが深く表現されています。あまり本音を口にしないカケルの心中が吐露されている重要な内容だと思います。

葛藤を描いた1番とは全く違って前向きさで彩られた2番は、テイストを維持しながらも感じるものを大きく違える面白さがあります。これも『キンプリ』ならではの魅力かもしれませんね。

JOKER KISS!/高田馬場ジョージGS

さぁ、めくるめく クチヅケをしよう
ダンスだって チョイスだって
いつでも君のために!

シュワルツローズのトップスタァであり色物枠(だった)高田馬場ジョージの「JOKER KISS!」は、ソロ曲では異彩を放つストレートなアイドルソング(アイドル然とした楽曲が異彩を放つのもどうかしてるが)

5話にて展開された物語は、今までの高田馬場ジョージの印象を一変させるノスタルジックで甘酸っぱいものでしたが、楽曲はあくまでも「高田馬場ジョージ」を貫いたキラキラとした一曲に。

それぞれの心中を考慮した要素が取り入れられ、どこか含みのある楽曲に仕上がっているキャラが多い『スッスッス』。この曲は曲調だけで解釈すれば逆にそれを一切感じさせないのが特徴的で、ひたすら前向きで妥協のない明るさが徹底されています。

エーデルローズの7人は"個人"のことをよく知るユウが全曲作曲しているのに対し、シュワルツ所属のジョージは(恐らく)ステージ用に第三者が作曲した楽曲を使用していることも、曲調から示唆されているでしょう。

一繋がりの美しい音ではなく、軽快で跳ねるような音使いが多用されており、リズミカルで歯切れの良いメロディラインがポイント。掴み所のない高田馬場ジョージというアイドル像を象徴しているかのようです。

さらに池袋エィスの音域を考えると気持ち控えめのキー設定にされており、高音を美しく響かせることよりも表現力豊かな歌声を届けることが優先されているように感じられます。

そのおかげか前向きで明るい楽曲でありながら耳馴染みが良く、さながら隣りに彼がいてくれているような感覚さえある独特な仕上がりの楽曲です。

「JOKER KISS!」も「Orange Flamingo」に続き合いの手が盛られている曲ですが、こちらは他人ではなく本人による合いの手になっています。

あくまでも彼個人が創る世界観が貫かれているのが対比的に感じられる他、高田馬場ジョージと池袋エィスの2人による楽曲であることも感じられるのが面白いですね。

歌詞もひたすらに最愛の人に対しての愛を語ったラブソングで、曲調と異なりその内容は物語ともしっかりリンクしています。

この曲を使ったショーを彼女に届けようと思ったジョージの心情を想うと、逆に心を締め付けられるものがある。楽曲とは真反対の感情を揺さぶられることもある。それもまたプリズムショーの魅力です。

Cメロの歌詞は彼女との別れをほのめかした内容になっており、実際に想い人と結ばれることのなかったジョージにはこのフレーズが刺さります。最もこの楽曲は、最愛の人と付き合った上でその未来を謳ったものなので、全体通してジョージには…という感じではありますが。

Sailing!/鷹梁ミナト

さあ進もう 風を受けて
目指すべき場所が僕にはある
諦めない
そう心に決めたから
もう迷わない

第6話担当、「劇場編集版 二章」のトリを飾ったのが鷹梁ミナトの「Sailing!」です。その熱意の込められた等身大のベストプリズムショーに涙を流した方も多かったことでしょう。かく言う僕は何度見ても泣きます。

海に包まれるようなイメージのサウンドで幕を開けるイントロが印象的。心はでっかい太平洋、ミナトのキャラを象徴する始まりです。

そのテイストを維持したままAメロ→Bメロ→サビへと徐々に勢いを付けて行き、爽快なサウンドによって大きな盛り上がりを響かせてくれる仕上がり。優しくもあり、力強さもある素敵な一曲です。

ヘッドホンなどで細かいところまで聴いて行くと、実は物凄く沢山の楽器と音が使われている楽曲であることが分かります。

バンドサウンドからシンフォニックサウンドに軽快な電子音、手拍子のようなクラップ音にコーラスといった人の営みを感じる音声まで。様々な音を複合することで1つの音楽が生み出されているのです。

張り巡らされた音遣いはどこか雑然としていて、でも全体としてはしっかり整っている。これは、様々な存在が息づき共生する"海"をモチーフにしているからこその工夫と言ったところでしょうか。

その海の中心に立ち、まっすぐに気持ちをぶつけるのが"皆の港"であるミナトの歌声というのが実ににくい演出で。この曲全体で6話のミナトが辿り着いた世界観を表現してくれています。

全ての音がミナトを応援しているかのようだし、その音が生み出す音楽を通してミナトが皆を応援しているようでもある。吹っ切れた彼が手にした「皆が目指すべき場所、地上の星になることを目指す」という目標を、この楽曲を通じて体現しているように思えます。

謳われている歌詞も、6話の物語でミナトが抱いた感情の全てを総括して表現しているもので、この曲のFULLを通して聴くだけで鷹梁ミナトの物語が一定の完成に至るというのが素晴らしい限り。

港になる彼にも必要な旅立ちがあり、彼にもまた目指すべき港と灯台の灯りがある。そんなメッセージを感じさせてくれる構成。

プリズムショーとしては作中で最も理想的な一曲と言っても過言ではありません。その結果はベストテンの中間発表にも表れたと思います。僕も個人的に大好きな楽曲でしたが、だからこそ投票で上位に行くのは予想できなかった。感動しました。

おわりに

まずは「一章」と「二章」の楽曲について振り返ってきました。

2019年は家にいる時や運転中など、僕自身も様々な場面で共に過ごした音楽達。しかしこうやって文章に起こしながらしっかり聴き直してみると、新たな発見も沢山ありました。

プリズムショーにおける音楽は映像と台詞を楽しむためのBGMでありながら、彼らを象徴する最も重要な存在でもあります。

アニメや映像を繰り返し見るのももちろん良いですが、音楽単体をしっかり咀嚼してみるのもまた一興。これもまた彼らの心情をより深く知ることができる方法です。

ベストテンがどんな作品になるかは当日になってからのお楽しみ(試写会は都合により申し込みませんでした)その前にこの記事を読みながら音楽を聴いて、改めて『スッスッス』の楽曲達を楽しんで頂けたら嬉しいです。

『キンプリSSS』マイソング感想&レビュー 「ベストテン」に合わせて音楽の魅力を振り返ろう(後編)

『キンプリSSS』全話感想まとめ

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はつ

『超感想エンタミア』運営者。男性。美少女よりイケメンを好み、最近は主に女性向け作品の感想執筆を行っている。キャラの心情読解を得意とし、1人1人に公平に寄り添った感想で人気を博す。その熱量は初見やアニメオリジナル作品においても発揮され、某アニメでは監督から感謝のツイートを受け取ったことも。

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