このブログで女性向けアニメの感想を取り扱うようになって1年以上が経ちました。
僕はそこそこの年齢の男性で、女性向けというカテゴライズにおいては作品のメインターゲットからは外れている存在です。そしてこうしてブログで自分の感想や意見を発信し、あわ良くば仕事を得ようとしている立場です。
今後も女性向け作品に触れることは多いと思うのですが、その僕を見て「記事を書くネタとして無理に女性向けに触れているのではないか」と思う人が増えることも想定されます。
これについて一度はっきりと「好きで見ている」と明言しておいても良いのかもしれないなと思い、その経緯と理由を書くために筆を執りました。
僕が女性向け作品に積極的に触れるようになったのはここ数年のことであり、すごく歴が長いわけではありません。でもその時期からよく見るようになったのには相応の理由があります。
これは「女性向け作品の感想で一定の支持を得た男性ライター」という比較的珍しい存在が、どのような経緯があってそこに至ったか、何故女性向けを好むようになったのかを記した自伝記事です。
興味がある方は読み進めてみてください。
目次
美少女アニメ好きのオタクだった頃
まず「僕は20代前半の頃は割と普通の男性オタクだった」という話から始めましょう。
可愛い女の子が出る作品を見て、周りと共有して語り合う。ネットに入り浸って毎日ニコニコ動画を見る。そんな特筆することのない一般的なオタクです。
ただこの時から既に、僕はカッコいい男性キャラが登場する作品については男性キャラの方に執心するタイプで、ここは他の人と価値観を少し違えていたかもしれません。
ゲームを遊ぶ時も絶対に男性キャラを操作するし、好きなキャラでパーティを組むと全員男キャラということが頻繁に起こる。当時のネットは女キャラを操作する、逆に全員女キャラになる人が圧倒的に多く、それに違和感を覚えることも少なくありませんでした。
この時はまだ女性オタクが少数派で、男女ともに楽しむ作品のイケメン系のキャラが「腐女子向け」などと揶揄されていた時代。僕はその腐向けキャラが好きなことが多く「なんでや普通にカッコイイやろ」と思いながらそういったやり取りを眺めていました。
1つだけ白状しておくと、この時期の僕は自分の好きな作品の好きなキャラでBLCPなどが組まれていることに100%肯定的ではありませんでした。この時期の男性ネット界隈は腐女子叩きも盛んで、腐女子は忍んで当たり前とされていた時代です。
若かりし頃の僕も、その影響を受けなかったわけではありません。しかし以降、色々な経験を経てこの考えは少しずつ改められて行くことになります。
そんな時代を違和感はありながらも特に困ることもなく過ごしていると、僕にとって大きな変化点となる出来事が訪れます。
一番楽しみにしていたこと
それは「女性キャラしか登場しないアニメ」のブームです。
一時を境に男性キャラがほぼ登場しないアニメ(主に日常系)が爆発的に増え、いわゆる"覇権"と呼ばれるアニメにも名を連ねるようになりました。
当然ですが周りもこういったアニメを楽しむようになり、自分もその波に乗って流行りのアニメを見るようになります。何となく見て、何となく好みの子を「俺の嫁(死語)」認定するのを楽しむ。それが当たり前で、それが今までと変わらない楽しみ方でした。
でも男性キャラが好きだった僕は、それを幾つか繰り返した時にふと気付いてしまうのです。
「あれ、これ楽しいか?」と。
別に女の子を見るのが詰まらないわけじゃない。ただ元々自分が一番楽しみにしてたのって、これじゃなかったんじゃないか?と考えるようになってしまった。
似たような経験をしたことがある方は分かると思うのですが、オタク系趣味は「これ楽しい?」と思った瞬間から物凄い勢いで冷めて行きます。
それ以降僕はパタリと美少女系アニメを見なくなってしまいました。
その後に出会った友人からは「お前が女の子キャラに萌えてる(死語)姿が想像できない」と言われたりもするほどです。無興味というわけではもちろんないんですけどね…。
カッコいい存在が好きなだけだった
そもそも僕は人生でアニメを全く見ていなかった時期がありません。世代的なこともありますが、「ふとした時にアニメに出会ってオタク化した」わけではなく、好きな作品を見ていたら自分の周りがオタクだらけになっていたパターンです。
高校生までコロコロコミックを毎月購読してましたし、初めて見た深夜アニメは中学生の時『最遊記RELOAD GUNLOCK』、深夜アニメというジャンルを意識した作品は『灼眼のシャナ』です(同世代にはかなりカオスな遍歴であることが分かってもらえる気がする)
ここで子供の頃、男の子がアニメや特撮を熱心に見る理由を想像してみてください。その答えはほぼほぼ「カッコイイ存在を見るため」だと思います。僕はこのキッズの価値観を引きずったまま大人になってしまった人間です。「アニメ=カッコイイものを見る」が常にベースに存在していました。
それが歳を重ねるに連れて周りが可愛い女の子を求め出すので、「大人になったらこういう楽しみ方をしなければならない」という固定観念の中でアニメを楽しむようになっていった、とその時の自分の思考を解釈しています。
こういった側面もあり、僕は元々原作が好きな作品などを除いて、アニメから距離を置くようになりました。意識して距離を置いたのではなく、何となく食指が動かない期間ができたという感じです。
アニメ以外に没頭した時期
しばらくアニメを見る機会を減らしていた僕は、その時間で別のものを見るようになりました。
特によく見るようになったのはテレビのバラエティ番組や連続ドラマです。
ネットの風潮に流されるまま「詰まらない」と決めつけていたのを反省し、遠ざけていた文化を取り入れる努力を始めたのです。音楽もアニソンから離れ、音楽番組をたくさん見て、流行りの曲も押さえるようになりました。
20代半ばになるとより視野を広げるために映画館に足繁く通うようにもなり、あまり興味のなかったお笑いに触れる機会も増加。とにかく色々なものに触れて研究する期間に身を置きました。
自分が一番大好きなアニメから距離を置いたことで、"好き"に縛られていた価値観の一部が解放されて、より幅広い"楽しい"を得られたというイメージ。今ではこれまでに触れてきたほとんどのものが"好き"で"楽しく"見られます。
人間関係を楽しめるようになった
アニメ以外の映像作品をよく見るようになったことで、結果的により多くのものを幅広く楽しむ心が養われたと思います。その間にアニメを見る機会ももちろんあり、その感じ方には確実な変化がありました。
具体的に言うと、キャラクターの心情変化や関係性の動きに非常に敏感になりました。アニメを好きなように見ていた頃の僕は「ストーリーの流れさえ面白ければ良い」という考えで、キャラクターの感情の機微などはさほど重要視していませんでした。
ですがTVドラマを見る機会が増えたことで、その辺りへの理解度が確実に向上しました。日本のドラマは色々な兼ね合いで人間同士の関係性を重視した作品が圧倒的に多く、近年のヒット作にも同様の傾向があります。
それらを楽しんだことで、人間関係の楽しみ方や紐解き方を知ったのです。
これは学生時代から芝居や創作系の執筆活動にも勤しんでいたこともあり、「キャラクター」に着目した物語の読解が自分の弱点である自覚があったのも大きいかもしれません。何とかそこを克服して取り入れようとする意志は強く持っていたと思います。
こうした経験の積み重ねから、僕は自身の趣向が確実に変化していることを感じていました。しかしそうであっても、その感性の根底から「アニメが好き」が消えていることもない。それも分かっていたのです。
女性向け作品との出会い
20代後半に差し掛かった頃、僕はたまたま某女性向けアプリ作品をプレイし始めます。友人が声優として出演していたからです。
ガチガチの乙女テイストの作品で、今まで興味はあったものの触れることはほぼなかったジャンル。付き合いのような形で入ることになったその世界で僕が感じたのは
「あれ、これ楽しいな?」
でした。
キャラクターの感情の機微を創造し、関係性の構築を楽しみ、(そこそこの恋愛経験も積んできており)、カッコいい男キャラばかりが出てくる。何ならこれ一番楽しいくらいじゃないのか?
難点としては男なのでやはり男に言い寄られるととにかく恥ずかしくなってしまう(嫌ではない)ことくらいで、正直このタイプの作品は今の自分には合っているようだ。そう感じた僕は何となく「最近の女性向け」のことを意識し始めます。
これはちょうど週1は映画館に通うことにしていた時期と重なっており、他にも様々なトラブルめいた巡り合わせが重なって出会ってしまったのが『KING OF PRISM』です。この出会いによって僕の人生は大きく狂うことになったのだがそれはまた別のお話。
現時点で自分が求めているものがある
元々カッコいい男性キャラが大好きだった僕は、彼らをひたすら堪能できる物語が女性向けにあることを身をもって知りました。
これは時代の流れによって、男性向け/女性向けがはっきりと区別されるようになったことも影響していると思います。
一昔前の女性向け作品の多くはそれこそ乙女かBLに偏っているものが多く、どちらかと言うと女性向けは「要素」を中心に創られる作品群というイメージがありました。当時は商的に価値があると認められている範囲がその程度しかなかったのでしょう。
それが今の女性向けは要素中心のサービスを盛り込むだけでは時代遅れ、しっかりとした物語が必要であると業界内でも考えられるようになっています。逆に男性向け作品は昔に増して性的サービスが露骨になりました。どうしてこんなことに。
男性も女性も楽しめる男女が同程度活躍するヒット作もどんどん少なくなり、結果としてアニメ文化では「女性の物語は男性向け」「男性の物語は女性向け」と認識されることが一般的になりました。
その中で女性向け作品の物語は、物語性よりも関係性やキャラクター性を重視して創られます。先述したTVドラマなどに近しい文脈なのですが、そもそもTVドラマのメインターゲットは女性であることがほとんどであり、そこに不合理性はありません。
そしてこれらの点を総合して行くと「僕の人生が積み重ねてきた趣向性と、今の女性向け作品の方向性が見事に合致している」ことが見えてきます。
今面白そうだと思える作品の中に、女性向けが多くなりがちな状況なんですね。
つまり僕は昔から女性向けのオタクではありませんが、現時点で僕の求めるものは女性向けアニメ作品の方に多くあるということなのです。
その少し俯瞰したところから作品を捉えているような視点が、僕の書く文章の独自性に繋がっているのだと自分では思っています。積み重ねと巡り合わせの結果が少しずつ実を結んでいるのでしょう。
おわりに
僕は一時を境に女性向けとか男性向けとかあまり意識せず、なるべくノンジャンルに自分が見たいもの、興味が湧いたもの、見ておくべきだと思ったものをひたすら鑑賞して分析するのが趣味になったと言えます。
その根底には「アニメが好き」で「カッコいいものが好き」という価値基準があります。
ですから無理に女性向けを見ているということはありませんし、今も自分に必要だと思えるものの中から選んで見ています。その方が熱量を持って鑑賞することができるからです。
そして1人の書き手である以上、自分の文章を求めてくれる・評価してくれるフィールドで文章を書きたいと思うのもまた自然なことなのです。
幸いにも現在は僕の文章を面白いと思ってくれる人が周りにおり、その読者さん達が求めてくれるものと自分が楽しめそうな作品もまたイコールです。であれば、限られた時間をそちらに割きたいと思ってしまうのは、これはもう仕方がないことであります。
この記事で語ってきたように、僕は自分が触れてこなかった世界にこそ新たな学びがあると思っており、頃合いを見ては新しい扉を開いて感性を磨いてきました。
女性向けアニメについてもそういった経緯で開いた扉の1つであり、その先はまだまだ「見尽くした」と言えるほどのものではありません。だからもう少し深入りして行こうと思っています。
そういったことが全て合致して、色んなものの巡り合わせとしてこのブログの感想記事群が生まれたんでしょうね。さらにこの記事もその巡り合わせの中で書かれている。それを1つの自分の財産として、今後とも頑張って行こうと思います。
以上でこの記事を締めさせて頂きます。この記事をここまでしっかり読んでくれた方、相当楽しんでくれていますね?今後とも色々書いて行きますので、どうかご贔屓頂けますと幸いです。それでは。
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