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全桜庭統ファン必聴! 『アナムネシス』のサントラは平成最後の化物クオリティ!

2019年3月19日

引用元:『スターオーシャン:アナムネシス オリジナルサウンドトラック』ジャケット

2019年3月13日「STAR OCEAN:anamnesis Original Soundtrack」が発売されました!

スマホアプリとしてリリースされ先日2周年を迎えた『アナムネシス』でしたが、音楽に関しては昨夏より始まったメインストーリー第2章「Twin Eclipse」から本格的展開となったため、満を持しての発売といったところ。

スマホアプリと侮るなかれ、全ての楽曲がシリーズおなじみのコンポーザーである桜庭統氏による作曲なのはもちろんのこと、ほとんどが生音で収録された楽曲になっており、クオリティはコンシューマー作品と遜色ない仕上がりです。

それどころか『スターオーシャン3』から15年以上桜庭統ファンをしている僕からして、今回のCDは正に必聴の1枚であると断言できる内容になっています!

「これを待っていた!」「正に桜庭統!」ともいうべき超攻撃的なサウンドによって展開される楽曲は、54歳にして若き日の勢いを感じさせるものばかり。

特に『スターオーシャン2』や『ヴァルキリープロファイル』『バテンカイトスシリーズ』の頃の桜庭統が好き!という方々には、ゲームをプレイしていないとしても絶対に押さえておいてほしい1枚です。

本当に素晴らしいCDなので今回は流石に記事にしたいと思い、筆を執りました。よろしければ参考になさってください。

CDの内容について

まずはサントラCDの中身について軽く解説。

『アナムネシス』は前述の通り、サービス1年半が経過した2章開始から本格的な音楽の展開が始まりました。なので、ほとんどの楽曲は2018年に製作&収録された最新の音楽となっています。もちろんCDには2章以前に展開されていた曲(4曲程度ですが)も収録され、新曲約20曲を2ループ(重要)で堪能できるCDです。

コンシューマ作品に比べると曲数は控えめですが、スマホアプリの特性上20曲のうち半数近くがバトルで使用されることを前提に製作された楽曲であり、戦闘曲の数で言えば十分な曲数が収録されています。桜庭さんの指さばきに脳汁を分泌させるには十分すぎる内容ですね。

その他オールスターゲームのサントラということで、シリーズのナンバリングタイトル1~5までの通常戦闘曲がそれぞれEXトラックとして収録されている他、ゲーム内イベントで使用されたアイドルソング3曲(Not桜庭音楽&後発の2曲は収録されていません)がフルコーラスで収録されているのもポイントです。

まぁアイドルソングについては桜庭さん目当てで聴いているといきなり場違い感があるにはあるのですが…曲自体の仕上がりはこちらもなかなかに高水準ですので、お遊びの一環として楽しんで頂けると良いのではないでしょうか!

桜庭統ファンにオススメの理由

では何故このCDをスターオーシャンファンではなく、往年の桜庭統に聴いて頂きたいのかを書いて行きたいと思います。

2000年代を想起させる超攻撃的なサウンド

今回のCDで本当に特徴的なのは超攻撃的な音使い。

90年代後期~2000年代に製作された、ネットで俗に「桜庭の本気」「この頃はマジで神」として長年語られる作品にかなり近いテイストの音楽が非常に多いのです。

2010年代に入ってからの桜庭さんの音楽も色褪せず素晴らしいものばかりですが、ここからの10年間はプログレの中にも耳馴染みの良い音楽性を取り入れることが増え、ただ攻撃的なだけでなく「オシャレな音楽」として成立しているものが多くなったと思います。

僕自身どちらの桜庭さんも大好きです。しかしファンだからこそないものねだりをしてしまうもの。昔の曲を聴きながら「この頃の攻撃力のある音が今の環境で聴きたいなぁ」と思うことは非常に多かったです。

そんな気持ちを持ちながら今回のサントラをとりあえず購入して、CD音源にヘッドフォン(そこそこのレベル)という環境下で聴いた感想は「これを待っていた」以外に出てきませんでした。

音楽の質としてはPS2やGC時代を想起させる圧倒的に前のめりな勢いに溢れるサウンド。曲の展開だけに着目すれば、彼の最高傑作と謳われることも多い『ヴァルキリープロファイル』(初作)の戦闘曲に非常に近いものがあると感じました。

『VP』の音楽はPS音源独特の硬質感によってもたらされているもので、あの生音には絶対に出せない力強さがあって成立している音楽だと思っています。ですので、個人的には生音化が進んだそれ以降の音楽と比較することは避けてここまで来ました。

しかしながら『アナムネシス』のサントラは、「『VP』の音楽を生音で再現するとこうなる」とも言うべき圧倒的な前のめりさを体現してくれています。この感覚を覚えたのは過去15年間で初めてと言って良いと思います。本当に感動した。

これは主旋律にギターが多用されていることによって起きている現象と言えるかもしれません。桜庭さんは生音演奏では自身の演奏をメインに置くことが圧倒的に多く、ギターは音圧や曲の拡がりを出すための補強として用いられていることがほとんど。

本人がライブ演奏ではトリオ編成(自身・ベース・ドラム)にこだわりを持っていることからも分かるように、ギターがメインとなっている楽曲の総数はさほど多くありません。ギターの利用が多いことはCDに付属しているアートワークの作曲者コメントにも記載されています。

そういう意味でも生音化が当たり前になった2000年代以降において、ここまでギターを活用してロックに仕上がっている桜庭統作曲のCDは珍しいと言えます。

推察:スマホでの再生を意識した創り?

『アナムネシス』のサントラがこういったスタイルになっているのは、スマホの内蔵スピーカーから音楽を出力する場合の聞こえの良さを考えて創られていると推察されます。

スマホではキーボードのような音は大音量でないとどうしても再生されづらく、アプリで使う生音楽曲は特にギターのような耳に届く確実性の高い楽器を主旋律に据えることが推奨されているというのを聞いたことがあります(※聞きかじった知識です)現在は音質も大分向上しているとは言え、小さな音で再生されることがほとんどでしょうし、この辺りの事情は大きく変わっていないと考えられます。

そのため、『アナムネシス』のサントラは主旋律にギターとシンセ(オルガン)の音を重ねて音の厚みを出す手法が用いられている楽曲も多く、ミックスもそういった厚みを重視して行われている印象があります。これが今回の楽曲における全体的な攻撃力の高さに直結しているというのが僕の所見です。

音を重ねるという手法自体は素人でも思いつく至極単純なもののため、実際の楽曲制作の現場では安直な方法とされているところがありますし「どうしても」という場合の切り札的使い方を除けば、多用している作曲家さんというのはほとんどいらっしゃらないと思います。

スマホという局所的な再生環境においては非常に効果的な方法として利用できるということだと思いますが、結果的にこれが10年以上聴けていなかった桜庭統の音楽性の1つを体現してくれる土壌になったのではないかと。制約がある環境での表現が他には出せない「強み」を持ったものになるという1つの好例になるかもしれません。

ライブを経験したことによる心境の変化

2018年は『アナムネシス』の1周年記念ライブやスターオーシャンの物理イベント「星海祭」、椎名豪さんと共同で開催された「The History 2018」など、桜庭さんにとってはここ最近では大変珍しいライブでの演奏を中心とした活動をされた1年でした。僕にとっては15年来の夢が叶った年でもあります。

各イベントの感想記事はこちら。

スターオーシャンフェス2018「星海祭」感想を書く① ~桜庭統ライブ編~

ゲーム&アニメ音楽の祭典!『桜庭統 椎名豪 The History 2018』レポート&感想!

それに伴いよく口にされていたのが「やはり自分にとってライブは必要なものであると感じた」という旨の発言。ライブで得た充実感を活かして楽曲制作を行っていきたいということも仰られていました。

少なくとも3月のライブ開催後に楽曲制作が始まった(と勝手に思っている)『アナムネシス』の音楽は、そういった発言をそのまま踏襲したような勢いを感じさせてくれる音楽ばかりだったと思います。

心なしかオーケストラ調の楽曲に関しても主旋律が跳ねるようなイメージの楽曲が多かったりと、「いつもと違う」感じを僕は覚える部分が僕には本当に多かったです。自身が演奏されている部分以外でも力強さを感じさせてくれる内容でした。

ライブでの演奏を聴いた時に「桜庭さんは今でもこんなに力強いサウンドを届けてくれるんだな」と心から思ったものです。激しい演奏をするためのアレンジが施された過去の名曲達は、圧倒的な輝きを持って僕らを魅了してくれました。

クリエイターが歳を重ねてくるとどうしても「置きに行くこと」が増え、攻撃的な表現というのはだんだん減って行ってしまう傾向があると思っています。大変失礼な話ですが、桜庭さんももう50半ばに差し掛かりつつある年齢ですから、昔とは全く違った感性で曲創りをされているんだろうし、昔と曲の感じが変わっているのは当たり前だと認識しておりました。

その認識を完全に改めさせてくれたのが昨年のライブだったのです。それに呼応するように『アナムネシス』の楽曲達は昔感じた桜庭さんの魅力を持ったものになっていました。この辺は本当にファンとして感動しかありませんね…。

そして『アナムネシス』のサントラには「この楽曲はライブで演奏するために創りました」という意志が込められていると思っています。ゲームのためだけに録り下ろした曲ではなく、実際にファンの前で演奏してパフォーマンスをすることを前提に作曲されている、そう感じざるを得ません。

コメントにも「またライブで演奏したいです」と書かれておりました。僕の記憶の限りでは「アレンジサントラを出したい」というような要望が書かれているものはあっても、ライブについて言及されている作曲者コメントは今までに見たことがないです。

口数の少ない桜庭さんが自分から言っているというだけで、それが強い意志であると感じられます(※勝手なイメージです)こういった経緯を踏まえた上で聴くと『アナムネシス』のサントラは桜庭ファンにとって更に味わい深い1枚になりますし、2010年以降の桜庭統の曲を楽しむ上で避けて通るべきではない1枚であると断言できます。

『アナムネシス』は色々あって大変な局面を迎えている状態ではありますが、何とか桜庭さんのライブだけでも開催してもらえないものか…というのがファンの心理です。ちなみに僕は今でも普通に『アナムネシス』を応援していますから、「星海祭」が開催されたら喜んで参加します。頑張ってくれ…。もう「SOシリーズの桜庭統のライブを見せてくれた」ってだけで俺としては何があっても100億点のアプリなんだよ…。

おわりに

『アナムネシス』のサントラの素晴らしさについて語って参りました。少しでも伝わっていたら嬉しいです。聴いてほしい。本当に聴いてほしい。

桜庭統の音楽好きなんだけど『アナムネシス』は押さえていない」という人にもこれだけはマジで聴いて頂きたい。本当に必聴と言って過言ではないCDです。もちろん「『アナムネシス』の音楽好きだよ」という新規ファンの方はここで押さえてみてほしいです。

「スマホアプリだし大したことないでしょ」「ゲームで少し聴いてるけど言うほど?」という偏見がある人ほど、このCDに度肝を抜かれるはずです。CD音質で聴いたら本当に別物になっていますので。ゲーム内で聴けるレベルだとほぼギターの音しか印象に残っていないはず…!

ここまで彼が1人の音楽家として、そしてゲームミュージックコンポーザーとして活躍してきた知識と技術と感性の結晶が『アナムネシス』のサントラには詰まっています。正にこれは平成最後に投入された化物クオリティの桜庭音楽です。改めて「桜庭統の音楽が好き」と思わせてくれるCDでした。

僕にとって桜庭さんはどんなアーティストよりも早く「この人の音楽をもっと色々聴いてみたい」と思った方ですので、どうしても回顧感情が強くなってしまうのですが、だからこそ「あの頃が好き」という方には自信を持ってオススメできます。

最高峰の桜庭音楽がこのCDにはあります。
是非お家で堪能してみてください。


STAR OCEAN:anamnesis Original Soundtrack

CDはスクウェア・エニックス公式通販の他、amazonでも購入が可能です。amazonでは一通り楽曲の試聴が可能な状態になっていますので、こちらで是非CDの感触を確かめてもらえればと思います!

1人でも多くの桜庭ファンの方、スターオーシャンファンの方にこのCDの音楽が届くことを願っております。

最後に桜庭さん、今回も最高の音楽をありがとうございました。「いつも最高」ですが、今回は本当に良い意味で「いつも通りの最高」ではなかったです。今後とも我々ファンに想像できないような素晴らしい音楽をたくさん創って行ってください。よろしくお願いします。

それでは!
お読み頂きありがとうございました!

  • この記事を書いた人

はつ

『超感想エンタミア』運営者。男性。美少女よりイケメンを好み、最近は主に女性向け作品の感想執筆を行っている。キャラの心情読解を得意とし、1人1人に公平に寄り添った感想で人気を博す。その熱量は初見やアニメオリジナル作品においても発揮され、某アニメでは監督から感謝のツイートを受け取ったことも。

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