あんさんぶるスターズ! アニメ ミリしら感想 単話感想

キンプリオタクの『あんスタ』ミリしら感想 第20話 未来への突破口 空を彩る懐中電灯の煌めき

2019年11月29日

輝く懐中電灯の光

Adamの策略を一歩上回り、一致団結するTrickstar。
今回は行動を共にしていたあんずの活躍から、氷鷹誠矢に協力を仰ぐことにも成功。自分達を応援する観客の獲得にも余念がありません。

全てが計画通り。Eveとの完全敗北から一転、見事に自分達のフィールドを作りだしたTrickstarは、万全の体制と士気でオータムライブに臨むことができる。

…と言うには、まだ早い。
今回不測の傷を負った存在。衣更真緒のメンタルに気を配らないわけには行きません。

Trickstarの面々からすれば、凪砂の言葉は荒唐無稽で理不尽な酷い言い草。しかし当の本人である真緒にとっては、図星であり自覚していた自身の欠点でもあった。そして仲間がその傷を抱えたままステージに上がることを、慮れない彼らではありません。

ですが、心配を向けられた真緒の顔は決して、後ろ暗いものではありませんでした。

横に並び立つ者として

「…もう気にしてない。寧ろ今回言われて良かった」

彼は仲間達の気遣いに迷いなく答えます。
自分は言われた通り、星だと勘違いした間抜けな懐中電灯なのかもしれない。皆の眩しき輝きに当てられて、自分も同じように輝いていると誤解していた哀れな存在なのかもしれないと。

「そんなことないよ!サリーこそ俺達のお星様だよ!」

当然、スバル達はそれに反発します。
今までTrickstarをまとめて統率して、ステージを円滑に進める努力をしてくれていた真緒。それが自分達と星でないわけがない。だから気にする必要なんてないんだと気持ちを正直に伝えるのです。

「…ありがとう」

でも真緒にとってはそれこそが甘えを生む理由になっていたのでしょう。

「俺、いっつも物分かりが良い振りをして、大人ぶってた」

皆に求められているから、俺はこのままで良い。星である皆を導いているのだから、自分もきっと同じレベルに立てている。コントロールが効かないほど強く輝くTrickstarには、まとめ役たる自分が必要だから、俺は今のままでいるのが正しいんだ。そう言い聞かせて彼はここまで走ってきた。

「でも…」

でも本当はそうじゃない。
本当は自分も、皆と同じ夢を見ている子供の1人。横に並んで、皆と一緒にがむしゃらに前を進んでいる1人の高校生でしかなくて、そこに差なんて本当はなかった。

「それを自覚して、形振り構わずやってみたい…」

自分も他でもないTrickstarの一員で、皆とここまで一緒に歩んできたアイドル。一緒にステージに立って、革命をやり遂げて、今なお前に進もうと挑み続ける革命の星。

その自負と誇りを胸に、まとめ役では収まらない輝きを…衣更真緒だから出せる最高の輝きを目指して挑戦して行きたいと、その心中を吐露します。

「懐中電灯じゃあり得ない熱量を大爆発させて、お前らと同じ星になる!」

敵将である乱凪砂からの手痛いメッセージを新たな力に変えて、再び強く立ち上がった真緒。それを温かく迎えるのは、共に苦楽を共にしてきた掛け替えのない仲間達です。

「行こう!ステージに!全員を魅了して、俺達のファンにしよう!」

全ての迷いと不安を吹っ切り、新星Trickstarが全力で描く軌跡、オータムライブのスタートです!

「うしっ!」

オータムライブ、始まる

Trickstarの新曲は彼ら3曲目となる3Dライブ。
未来を拓く突破口「BREAKTHROUGH!」は印象的なギターリフから始まる、今までのTrickstarからは考えられない激しく情熱的なナンバー。

ダンスも相応に激しく緻密な振り付けが多く、ここに来ていよいよ夢ノ咲の頂点に立った風格を思わせるステージに。

今回の見所は何と言っても、3D映像と2Dセル画の美しい切り替わりでしょう!

動きが印象的で重要な部分では、3Dの流麗で美しい動きでしっかりと魅せ、キャラクターの感情機微が伝わる顔面のアップはセル画に移行。しっかりと彼らの感情を描写するこだわりを披露しました。

このおかげで、1つ1つの表情が短い時間の中で凄く印象的に視界に入ってきて、今までのTrickstarとの明確な違い、決意の強さ、自信の表れが感覚的に理解できる映像に仕上がっています。

この点に関して多くの言葉を弄する必要はないでしょう。このライブシーンは一度見て最も印象に残った顔を語るのも良いし、何度も見て自分の最も好きな顔を決めるのを楽しんでも良い。全ての表情が熱意に満ち満ちていて尊く素晴らしい。過去最高クラスに気合いが入ったライブシーンではないでしょうか。

今回は絵コンテを櫓下純白こと菱田監督が切っていますが、この辺りの采配も彼の塩梅によるところかもしれません。『キンプリ』でも同様に3Dと2Dを行き来する映像は多用されますし、この点は『あんスタ』にも技術の積み重ねが活かされてきていると思います。

ただ、『キンプリ』の演出手法はあくまでライブ中にストーリーを並行展開することに特化しているのに対し、『あんスタ』はライブ中の魅せ方の違いを映像の特色を活かしてはっきりと表現するスタイルです。

そういう意味でも、今回のライブシーンにおける3Dと2Dの相関利用は、全く新しい映像体験だったと思っています。

BREAKTHROUGH!

そんな印象的なライブシーンを演出するのは、前回のライブから無数に増加されたドローン達。観客と彼らの写真を一緒に撮るファインプレーを見せた立役者が、今回はステージ全体を明るく照らします。

そう、今回のライブを最も明るく照らしたのは、夜空に輝く"星"ではない。無数に飛び回るドローンが有した"電灯"の光なのです。

確かに宇宙に煌めく星々は物凄い輝きを持っていて、その輝きは何万光年の距離を超えて地球にまで降り注いでいます。アイドルであれば、皆がその天に輝く星を目指したいと思うのは当然のことでしょう。

でも実は、世の中の人々を最も強く明るく照らしてくれるのは星の光じゃない。時として目の前にある電灯は、手に持った懐中電灯の光は、何よりも大きな支えとなって我々の世界を照らしてくれるもの。

必ず掴んでみせる
夢はきっともう自分だけのモノじゃない

自身が認めている以上、衣更真緒は今はまだそんな懐中電灯の光なのかもしれません。そしてそれを良しとせず、より高みを目指すと彼は言いました。

けれど、彼が今照らしている世界を、今の彼の輝きによって成立するステージを決して否定しないでほしい。その輝きを持てることもまた誇ってほしい。そう思いいます。

期待を希望にして
Let's BREAK THROUGH

星よりも近くで、目の前で全力で挑み続けるその姿に心を打たれる人達も沢山います。ドローンの光がステージを煌めかせるように、地上の星もまた誰かを照らし導く存在になり得る。誰かの指標と、帰る場所となることはできるのです。

それはきっと、これから天に輝く星となる衣更真緒の原点となってくれるはず。

此処に立っている理由感じて
未来へ行こう

ステージを照らし続けた電灯の光。
夜空の星よりも強く明るく眩しい輝き。
その全てが夜空に舞って描き出す9つの文字。

「Trickstar」

今日この場所このステージで、彼らの名前を生み出し象り体現したのは、他でもない"懐中電灯の光"でした。

Adamのステージ

「――今日は台本は要らないよ」

ステージの向かい側、屋根の上で乱凪砂と七種茨――AdamはそのTrickstarのステージを見届けていました。

「と言うか使えない」

凪砂は彼らのステージから並々ならぬものを受け取り、茨に予定の変更を申し出ます。

…いや待て。何度か見返してようやく気付いたが、なんで屋根の上に立っているんだ?カッコイイからか。普通に受け容れてしまっていた。邪悪な絵コンテを切るな。

当初の予定は、茨のプロデュースによるAdamの存在感を押し出すステージだったのでしょう。また凪砂はその見た目を活かし、ステージ上では俺様系?帝王系?のキャラとして活躍しているのも分かりました。

ですが今回はその"普段通り"を見せることはありません。立ち上がったTrickstarが観客を魅了し切ってしまったこと、その多くが自身らを快く思わない非特待生の生徒であることから、Adamの存在感が逆作用する可能性が高いからです。

凪砂はそれをTrickstarの成果として「愉しむ」ことを選びましたが、茨はそれを作戦の失敗から来たトラブルであると断定。ここでAdam2人の本質的な価値観の違いも見ることができました。

「急がないと大勢を決せられる…」

自分の原点となる"あの明星"との過去。
歌を教えてくれたあの人の息子と相対する数奇な運命を噛み締めながら、凪砂と茨はステージに上がります。

「世界を神代に戻そう!」
「我らが神から愛された、原罪以前の楽園へ!」

鳴動する茨

夢ノ咲派遣スタッフが設営した?Trickstarのステージの反対側には、Adam達の立つべき舞台、そして彼らの活躍を待ち望む観客の姿がありました。

「悪辣非道な手段を用いてでも、敵を殲滅する!」

突撃!侵略!!制覇!!!

「それが自分の生きる意味!この世の地獄が自分の天国!」

高らかに笑う茨のMCは、とても観客の前で披露すべき文言とは思えません。ですが(理解不能な)コール&レスポンスが起きている辺り、これが彼の"いつもの流れ"と思うべきなのでしょう。

「自分、最低野郎で本当に良かったです!」

衝撃の前口上。
本当に大丈夫か。

「…それで良い」

良いのか。
閣下がそう仰るなら私はOKですが。

「快楽は悪魔の罠だけど、私達は天使じゃない」

甘い蜜の先には毒がある。
そうやって陰湿に勝ちを求めることは決して褒められたことではないかもしれないが、自分達はそんな清らかな存在ではない。そう言いたげな凪砂の演説が始まります。

"愛"

「父よ…私を見捨て、先に天国へ逝ってしまった神なる父よ」

虚ろな目で凪砂が紡ぐのは、自身を匿い人里から遠ざけていた亡き"父"への想いです。その父がどのような人物だったのかは全く分かりません。ただ芸能界を牛耳るに至った人物が、善良な手段のみを用いていたとは考えられないのが現実です。

それでも凪砂にとっては彼は「神なる父」であり、崇拝すべき相手であることが重要です。

父の思惑の先には、アイドルへの"愛"があるのが分かっていたから。その"愛"があるからこそ父は芸能界を支配し、無数のアイドルを世に生み出すことを選んだ。少なくとも、凪砂の中ではそう解釈されています。

「愛は分からないけど…」

しかしその父は自分に"愛"の正体を伝えることなく、教えることなくこの世を去ってしまった。その結果彼が求めて誰かに与えていた"愛"なる概念は、乱凪砂にとって永遠に知ることのできない聖域へと成り果てた。

「私がアイドルになれば、分かるようになるのかな」

それを理解する可能性はただ1つ。
彼が愛したアイドルに自分がなるしかありません。

ステージの上で誰よりも輝き続けることで、父の寵愛を受けられる存在へと自分を昇華させる。それだけを目指して乱凪砂はアイドルとしての自己を創造している。

僕は彼の胸中をそのように想像しました。
それが本当に彼にとっての救いとなるのか分かりません。そんなことをしても、"愛"を理解できないのに変わりはない。もしかしたら、そんなことは凪砂もとっくに分かっているのかもしれません。

「父よ…私はずっと…ただそれだけを求めている」

それでも、彼は求めている。
その答えの存在を"願う"のではなく、"求めて"いる。

それこそが彼の決意の表れで、何よりも強い意志でしょう。

Trickstarの熱量に相対するため、マイクONで大衆に届けてしまった乱凪砂個人の決意と情熱。それを抱えながら、アニメでは初となるAdamのステージが幕を開けました。

The Beast of the End

Adamのステージは残念ながら3Dライブではありませんでしたが、異様にキラキラした背景と独特の動きで別格感が演出されています(「顰めた顔のままで生きるのか」のところの閣下の顔本当に顰めすぎだし、よく見たらハリウッド行きの電車が星座になる曲のダンスとそっくりすぎて頭を抱えてしまう)

これには完全に観客を惹きつけたはずのTrickstarも、最強のアイドルたる彼らの存在感には舌を巻く事態に。彼らもレベルアップしたのに間違いありません。しかし、それでも乗り越えなければならない壁はまだ高く高くそびえ立っていたのです。

「Adamが…乱凪砂が歌い始めた瞬間に、全てが引っくり返されてしまった…」

煌々と輝くAdamのステージはその場にいる全ての観客を巻き込むパワーがありました。Trickstarの周りも、まるで彼らが前座であったかのように静まり返ってしまいます。

「悔しいけど…やっぱりとんでもないよ」

自分達も相当に実力を上げた。
それは決して慢心ではなく裏付けのある自信だったし、実際にTrickstarはその成果をしっかりと魅せ付けたはずでした。

「今はAdamが優勢かもしれないけど、まだまだ大接戦だよね…」

それでも今は負けを認めざるを得ない、厳しい現実が目の前を覆います。そしてこの場でそれを受け入れられなかったそこで終わり。SSでAdamとEveが合体したEdenには決して勝つことはできません。

サマーライブとオータムライブ、それぞれでEdenの半身と対決とするも、Trickstarはどちらも届かなかった。でも本番では彼らを超えていなければならない。より大きな輝きを魅せなければならない。

それには今までを上回る途方もない努力と意志が必要に違いありません。

「見てろよAdam…」

それでも彼らTrickstarは屈しません。
どんなことにも心を折られず、その経験を糧にして邁進する。それができるからこそ彼らはここまで歩んできた。何者でもなかった頃から、大きな意志をステージにぶつけられる存在にまで彼らは成長しました。

「いつか眩しいって怯ませてやる。今は懐中電灯でも…いつかきっと!」

自身の存在を否定した乱凪砂のアイドルとしての振る舞いを見て、その差を実感した衣更真緒。でもそれは彼とその仲間達にとって、超えるべき明確な目標となったとも言えるはずです。それがきっと、彼らに新たな光を与えてくれるでしょう。

「俺は絶対に…」
「お前らに土下座なんかしてやらないからな!」

もう3人の星と1人の道標ではない。
真なる意味で志を同じくした4人の星。新星Trickstarの道行きは、ここから始まります。

おわりに

情報量な。
20話は1話以来となる櫓下純白氏による絵コンテ。正直、もうここまで来たら監督がコンテを切る回はないのだろうと完全に思い込んでいたので、初見は全く気付けませんでした。

ただ全体的に今回は男らしくて熱い画面創りになっていたのは感じ取っていて、今回燃えるな~凄い楽しい回だな~くらいに思っていたところ、スタッフロールの記名を見て「ァ!!」となった次第です。

記事を書きながら改めて見直してみると、明らかにキラキラしているし「カッコいいカット」が多いしで、どうしてその可能性を考えなかったんだと悔やんだ始末。やけに肌に馴染むアニメになっていたのはそういうことかと首を振りながら打鍵していました。

「オータムライブ」はTrickstarをはじめとするキャラ感情がはっきりする大事な回であったと同時に、「地上で輝く星である」衣更真緒の成長と現時点での活躍がフィーチャーされた回ということで、監督が絵コンテを担当したことにも様々なルーツを感じざるを得ない回でした。

それを踏まえた記事にしましたので、両方"分かる"方に楽しんで頂けていたら幸いです。分からない方は『KING OF PRISM-Shiny Seven Stars-』を見て下さい(記事内では久々のノリ)

今回提示された明星親子に関わる新たな伏線、それに伴ったEdenとの縁など終盤に向けて闇も光も深まったこの「オータムライブ」。大変楽しいエピソードでした。

最近は本当に記事を書くのが大変ですが、それはそれだけ僕がこの作品の真髄に近いところを楽しめているということだと思いますし素直に嬉しいです。盛り上がって参りました。

さぁ12月はハロウィン!
どんなエピソードで誰が活躍するのか全くの未知数ですが、1話でジャッジメントでないことを祈りながら、カボチャに赤白帽子でも被せておきます。

次週をお楽しみに!それでは!

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はつ

『超感想エンタミア』運営者。男性。美少女よりイケメンを好み、最近は主に女性向け作品の感想執筆を行っている。キャラの心情読解を得意とし、1人1人に公平に寄り添った感想で人気を博す。その熱量は初見やアニメオリジナル作品においても発揮され、某アニメでは監督から感謝のツイートを受け取ったことも。

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