アニメ ミリしら感想

【ミリしら超感想】『アイ★チュウ』第2話「disque~刻まれるもの~」響き合う関係と自由な在り方

2021年1月29日

引用元:https://etoile-anime.jp/story/02/

やって参りました『アイ★チュウ』第2話感想記事。

ミリしらでのキャラアニメの感想を読む面白さは、回を重ねるごとに執筆者たる僕のキャラへの印象が変化して行くところにあると思います。

それでは第2話「disque~刻まれるもの~」を見て行きましょう。今回スポットライトが当たったのは、音楽で絆を紡ぐ「I♥B」と、個性溢れる芸術集団の「ArS」です。彼らの最も根源的な魅力を、それぞれのユニットについて紐解いて参ります。是非お楽しみ下さいませ。

多国籍バンドアイドル「I❤B」

『アイ★チュウ』の中でも取り分け音楽をメインとしたアイドル活動を目指す「I❤B」。アメリカ出身のノアを中心に、全員が別々の国から日本にやってきた多国籍チームです。

リュカ・レオン・黎朝陽・ラビと全員のキャラ名がフルネームではなく(黎朝陽は本名かも?)、個別の芸名を持っているのも特徴的です。しかしノアはアメリカ時代の幼馴染である星夜にも「ノア」と呼ばれていることから、ファーストネームのみでの活動なのかもしれません。

彼らがそのようなスタイルを取っている理由は、その出会いの特異性にありました。5人は日本に来る前より、SNSを通じて音楽をセッションする仲を築き上げていたのです。故にエトワール・ヴィオスクールに入学した時点で、I❤Bは既に完璧に近いパフォーマンスができるユニットでした。

1話にてノアがCD3,000枚という目標に物怖じしなかったのは、今までの活動から来る自信だったのが分かって納得しました。日本のアイドルとしては完全なる駆け出しでも、多国籍バンドとしては既に十分な実力を持っているわけですから。

ですがそんなI❤Bも、あらゆる意味で十全というわけでは決してありませんでした。ネットを介しての交流は積み重ねてきていた彼らも、リアルで会うのは日本に来てからが初めて。そして一度顔を合わせれば、全員が音楽以外の人間性とも向き合わなければなりません。

ネットを介してのセッションでは、それぞれの演奏をデータでやり取りして縫合する…といったやり取りで曲が創られていたのではないかと想像します。やはりバンドである以上、一同に介して曲創りをする以上に良い環境はありません。それができない以上は限界があり、クオリティもどこかで高止まりするでしょう。

そしてその恩恵を得るためには、人間同士のより深い交流も必要となります。それぞれの癖やスタイルを全員が把握し、それに合わせた唯一無二のパフォーマンスをする。それがあって初めて、リアルな熱量や心の昂りを体現することができるはずです。

センター足るノアは、そのネットとリアルの違いに気付いているようでした。正確かつ整った音が求められるネットに対し、多少は荒々しくともその場でのみ感じられるライブ感が必要なリアル。その感覚差を感じ取ることから、I❤Bの飛躍は始まりました。

異なる5つの個性

セッションに違和感を覚えたノアを見て、他のメンバーが取った反応も四者四様と言ったところでした。

キーボードの朝陽はその違和感が演奏の問題ではないかと推察し、より良い演奏を目指しての提案を行いました。

「納得行かない=演奏に問題がある」というのは真っ先に思いつく課題点です。バンドにおいてまず疑わなければならないポイントですし、今までの彼らもやってきたことだと思います。

なかなか言い出しっぺも指摘しづらいポイントについて、真っ先に「自分のせいではないか」と考えて話を切り出した朝陽の振る舞いは好印象。ただし、それはどこか自身の無さの裏返しでもあるように見えています。

そこをフォローするように、具体的な改善案を提示したのがドラムのラビです。ドラムは曲のリズムを確立する全体の屋台骨となる楽器ですが、メロディと関係ないフレーズを叩く箇所も多いのも特徴。細やかなアレンジで、新たなムーブを生み出すこともできるポジションです。

自分の役割を考えて的確に動くことができる彼が、ドラムとしてバンドを支えてくれているのには安心感がありますね。ギターボーカルで引っ張っているノアも全体を俯瞰して見られるタイプですし、2人がいることでI❤Bは安定した活動ができそうです。

一方でギターのレオンは「今の演奏でも問題ない」と判断し、ノアの態度を異に介していないような態度を取っています。一見すると軽薄で意識が低そうな彼ですが、完璧を求めすぎて自爆する表現者は往々にして多いのも事実です。

状況に応じて80点をキープできる程度に「力を抜く」と言うのも、プロとしてやって行くには大事な価値観でしょう。今回は目標であるCD3,000枚を売り切れればOK。短期目標に照準を絞って考えるメンバーが1人いるのは良いことだと思います。

そのレオンの態度に異を唱えるのはベース担当のリュカです。音楽に対してストイックで完璧を求める姿勢は、それだけで賞賛に値するものです。

手を抜けば相応の曲しか生まれず、それは反応として如実に返ってきます。今回はCDを3,000枚売ればクリアですが、その先に続く目標を見据えるならば最初こそ肝心なのも事実です。

全力でファンに応えようとする彼の姿勢が、曲やアイドル活動全体のクオリティの底上げにも繋がって行くことでしょう。

話しぶりから察するに作曲も彼が担っているようですし、「自分の創った曲には全力で向き合いたいし、向き合ってほしい」というクリエイターとしての想いも持っているのかもしれませんね。

このようにI❤Bは全く異なった感性を持つ5人によって生み出されたバンドアイドルでした。その個性のぶつかり合いが相乗効果を生み、ネットを介しての音楽活動でも多くの人を魅了したのだと感じさせられます。

近くにいる誰かと響き合う

音楽のみで繋がっている彼らは、音楽以外で向き合うことについては非常にドライな関係性からスタートしました。

全てが上手く混ざり合えば最高の化学反応を見せられる5人でありながら、だからこそ崩壊するリスクも孕んでいます。現実で交流を交わした彼らを待っていたのは、順風満帆とは程遠い人間関係のしがらみでした。

しかし彼らにとって最大の救いは、リーダーであるノアがその不協和音を良しとしない人間だったということです。彼は音楽以外のところでも、バンドメンバーと深い仲になりたいと考えている少年でした。

執事のセバスチャンからの助言を受けて、彼はすぐさまそのための行動に打って出ました。それは皆で朝からカレーを作るというなかなかにハードな内容。しかも本人は料理ができない。大丈夫かオイ。意外と強引なところがあるようです。

冷静そうに見えて実はかなり感情的に動くタイプのようで、思い立ったが吉日とばかりに全力で行動してしまいます。その勢いには、個性溢れる他のメンバーもタジタジとなるのが見ていて愉快。そんなまっすぐな彼が声をかけたから、I❤Bはネットを介しての結成を実現できたのでしょうね。

「みんなで同じ料理が食べたいんだ」

子どものように強い想いを吐露するノアの前では、バラバラだったメンバーも気持ちを同じくして行動ができるよう。それだけ人を惹きつける根源的な魅力が、ノアにはあるのでしょう。

一生懸命に皆で慣れない日本料理を作って、同じ味と体験を共有する。そのやり取りが彼らの心を近付いて、より良い表現を可能にしました。ちなみにカレーはまずく作る方が大変だと思うので、リュカが入れた何かはこの世の物ではないのだと思います。

「音楽は独りでもできるし、どの国にいても曲は創れる」

彼らがアイチュウになったのは、きっと全員が「このメンバーと1つの場所で音楽をやりたい」と思ったからでしょう。でなければ、5人の誰とも縁のない日本に来る理由はなかったはずです。

「でも…近くにいる誰かと響き合えれば、もっと良い音楽が生まれる!」

人間性もスタイルもバラバラながら、心の奥底に秘めたる想いは同じ。そのI❤Bが響かせる音を、このアニメを通して見守って行ければと思います。

芸術家集団「Ars」

2つの目のユニットは芸術家が集まって結成された「ArS」です。

彼らは全員が校長に見初められる形で学園に入学し、アイチュウとなりました。そして今のところは誰も「本気でアイドルになりたい」と思っていないという珍しいユニットです。

それぞれがアイドル以外に"一番"とも言える目標(仕事)を持っているため、別に退学になることに大きな問題意識はありません。ただ、だからと言って全くやる気がないわけでもないのが見落とせないポイントでしょう。

アイドルは自分の表現力を磨くためのステージの1つ、生きていくために必要なものではない。ただ利害が一致しているから「やっても良い」という感覚。それを全員が共有していることで成立していると言ったイメージです。

"アイドル"というものに執着が一切なく、それなりにやれれば良いと全員が思っています。その前提のせいで、良くも悪くも振る舞いに余裕があるのがArsの面白いところでしょう。

その中にただ1人、Arsの特異点とも言える存在が放り込まれてしまっていました。

彼の名前は鳶倉アキヲ。
Arsの中で誰よりも「アイドルになりたくない」と思っている、また1つ下のレベルでアイチュウと向き合う少年です。

自信も余裕も実績もなく、やる気さえも一番ない。挙句は女性恐怖症という一面まで持っている、とことんアイドルに不向きな少年。現状は圧倒的な劣等生であるアキヲを取り巻くArsの在り方が、第2話で語られた彼らの物語でした。

たった1つだけの差

アキヲが他のメンバーと明らかに異なっていたのは、アイドルを「やらざるを得ない」気持ちだけはとても強く持っていたことです。最もアイドルから遠いところにいるにも関わらず、退学になってしまうことへの危機感を持っているのはアキヲだけという皮肉がありました。

どちらかと言えば、彼に相対するArsの面々こそが軽い気持ちでアイドルを考えている側だと思います。本気でアイドルを目指している人から見れば、とても許容できる相手ではないと言っても過言ではありません。

それなのに「アイドルとして劣等なのは?」と問われれば、ほとんどの人がアキヲと答えるのが現実でしょう。それは彼が「強制されている」と強く思いすぎているあまり、目の前のことに全くポジティブになれていないからだと思います。

Arsは基本的に「やってもやらなくても良い」という立場から、自分の意思で「やってみても良い」と判断を下した者の集まりです。自分で選んでいるからこそ彼らは前向きになれるし、今の状況を最大限に楽しめるのだと思います。

さらに言えば、メンバーはほとんどがクリエイター気質である故に、元から人前に立つことを得意としていたわけではないでしょう。よって5人がアイドルに前向きなのは、ただ彼ら自身が新しいことに挑戦し楽しもうとする心を持っているからに過ぎません。

「嫌だな、やりたくないな」と思えばいつだって手を引ける。だからこそ楽しめるうちは"新しいこと"を楽しんで吸収したい。その想いがArsの原動力と見えています。

そしてそこが5人とアキヲとのたった1つの差だと言えるのです。
現状をポジティブに捉えるかネガティブに捉えるか。今は浮いているアキヲと5人との差は、実はたったそれだけのことしかありません。

彼もどこかで「今を楽しもう」と発想できさえすれば、他の5人とその想いを共有できるはず。そしてその機会を作ってくれる仲間は、今正に彼の横に並び立っています。

自由でキラキラしてるユニット

他のメンバーと同じく、アキヲもまたガラス工芸家というクリエイターの一面を持っていました。他のメンバーよりもいささか地味目な特技である故に、それを目の前で評価してくれる人に出会うこともそれほどなかったのではないでしょうか。

だからこそ、同じ生みの苦しみと喜びを分かち合えるArsの面々は、彼にとっての貴重な財産となり得ます。彼ら5人は、そのアキヲの持ち味を正当に評価してくれる"眼"を持つ者だったからです。それどころか彼の欠点やネガティブ思考さえも、「面白い」「最高のキャラ」と"個性"として評価してくれる柔軟さまで持ち合わせています。

自分の努力と技術を正当に認めてくれるどころか、マイナス面まで受け入れてくれるユニット。

それがアキヲがArsから初めて感じ取ったポジティブなイメージでした。それだけでも彼の心は5人にグッと掴まれたのだと思います。

「この人たちめちゃくちゃだ…」

もしアイドルとしてのセオリー通りに邁進するユニットの一員になっていたら、アキヲはきっと何もしないままに退学してしまっていたことでしょう。

ですが彼が共に歩み始めたのは、破天荒で全く常識に従おうとしない異色の6人組です。その結果、彼の欠点は良い意味で受け止められ、絶対に向き合えるはずのなかったアイドル活動の扉を開くに至りました。

「でも、こんなに自由でキラキラしてるユニット…他にないかも…!」

これだけ個性的で前しか向かないメンバーの中にいれば、アキヲの後ろ向きさや生真面目さも異なる"輝き"となってファンの心に届くのではないでしょうか。そして行く行くは、彼が他のメンバーの行き過ぎた自由さに歯止めをかけるストッパーの役割も担えるような気がします。

何事も適材適所。鳶倉アキヲが自分の殻を破るために最適な環境は、彼にとって最悪だったはずのエトワール・ヴィオスクール内にて体現されました。アキヲがいるからこそ他のメンバーの自由さがより良い味を出す。そんなアイチュウを目指して、Ars6人で頑張って行ってほしいです。

おわりに

2つのユニットの話をクロス展開することで、しっかりと彼らの持ち味を描き切ってくれた『アイ★チュウ』の第2話。

ユニット単位で見ればかなり彼らの関係性の面白さが感じられる構成となっていて、想像していた以上に1話の内容が濃いアニメなのだなと2話にして思い至りました。記事に書けていない部分でもF∞Fの3人や星夜とノアの関係性など、細かく見所が敷き詰められた内容でした。

感想記事はユニットというくくりで考えての読み解きにした都合上、個々のキャラについては明文化できていないところもありますが、今後の展開と合わせて解釈して行ければと思っています。

それでは今回はこの辺りで。『超感想エンタミア』のはつでした。また次回。

  • この記事を書いた人

はつ

『超感想エンタミア』運営者。男性。美少女よりイケメンを好み、最近は主に女性向け作品の感想執筆を行っている。キャラの心情読解を得意とし、1人1人に公平に寄り添った感想で人気を博す。その熱量は初見やアニメオリジナル作品においても発揮され、某アニメでは監督から感謝のツイートを受け取ったことも。

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