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【ミリしら超感想】『アイナナ Third』第4話 「心の声」ぶつかり合う想いと想い 未来へ繋げる喧嘩の夜

2021年8月4日

引用元:https://idolish7.com/aninana/story/third/04

怒涛の勢いで早くも鬱展開に突入した『アイドリッシュセブンThird BEAT!』。堪んねぇなうへへ...。

どん底(※当社比)まで落ちた以上は、当然這い上がる必要が出てくるもの。その努力が裏返って二枚底を抜いて行く可能性に怯えつつ、前に進もうとするアイドルたちを応援する時間が始まります。

今のところ一切の光が感じられない中で、登場キャラと我々がどのような道標を掴むことになるのか。その1つ目を辿る第4話「心の声」。しっかりと紐解いて参ります。よろしければお付き合いくださいませ。

和泉兄弟の過去と今

大和を殴ってしまったことで、大和ではなく自分が寮を出る決意を固めた三月(※なお当然のように大和も出て行く模様)

とは言いつつも、その決意は「ほぼ引っ込みがつかなくなった」ことが理由なので、本心は行動とは全く異なっていると考えるのが自然です。

心配して後を追いかけた一織に、三月は自身の本音を口にします。それは昔アイドルになれず燻っていた自分が、一織のアドバイスに全く耳を貸せなかった記憶に由来するものでした。

言われる側から言う側に回ること。
立場を異とすることで、初めてどちらともの気持ちが分かるようになります。

大和を心から心配して声をかけたのに、それを正しく伝えることができなかった。大和には拒絶されて、結果として最悪の状態を生むキッカケを作ってしまった。その直近の経験が、かつての一織の言葉を三月の脳内にフラッシュバックさせました。

言われる側では"お節介"だと感じていた内容も、言う側に回れば全て真実となり代わります。「本気で相手を想っている」と分かっているのは自分だけで、言われる側はどうしても「何か裏があるかもしれない」と考えてしまうもの。故にその言葉を全て言葉通りに受け入れることはできません。

ですが言う側からすればそれは、自分の想いを踏み躙られるのと同じことです。そんなことをされれば感情的になるのは当然でしょう。

実際の想いと行動は一時の激情によってかき乱されて、自分でもコントロールできない結末を生み出してしまうのです。

正しく想っていて、正しく言葉にしたつもりでも、正しく相手に伝わるとは限らない。

結末だけを見て改善点を模索しても、100点満点の回答を導くことはいつだってできはしない。それが人間関係の難しいところだと思います。

そしてこの時に三月が一織への謝罪を口にしたのは、当時の一織が三月の弁に言い返すことを選ばなかったからではないでしょうか。

過去の三月は現在の大和と同じようなことをしてしまっていて、一織もまた相応に傷付いていたはずです。それでも彼は本気で兄を想っていたからこそ、口を噤んで対立することを選ばなかったのだと思います。

それは自身に付けられた傷を容認し、相手にその贖罪を求めない選択です。もし僕の想像通りに過去の一織がそうできていたのだとしたら。当時から一織は極めて聡明…いえ、ここは「重度の兄想いであった」と言ってあげるべきだと感じます。一織は優しい奴だなぁ。

今回の出来事において、和泉兄弟の関係性がより深まったことは数少ない"救い"となり得る要素です。それは転じて、三月が大和の気持ちを分かってあげられる道標にもなると思うからです。

こうなってしまった以上、どちらかが歩み寄らなければ解決に向かうことはできないでしょう。故にそうできる可能性を三月が持ってくれたことは、1つ未来への安心材料となりました。彼らの関係性が少しでも良い形に着地できることを、今の今から祈っています。

MEZZO"の交流

寮に"残された"4人のメンバーたちは、日常生活に四苦八苦です。食事の準備すらままならず、大和と三月の見よう見まねで作ったものも無事"何か"へと変貌させてしまいます。

この状況でも外食という方法を取らず、寮でメンバー揃っての食事にこだわるところが何とも健気な1シーン(だと思う)その辺の対応は事務所側が何とかしろよという気持ちが強いのは実際そうです。

第4話の中で唯一微笑ましく見られるのが彼らのやり取りなのですが、状況が状況だけに常にヒリヒリしたものが胸を覆っている感覚は残ります。物語中でも、ふとしたキッカケで話が鬱々しい方向にシフトしてしまうなど問題は山積みです。

このシーンで特に押さえておきたいポイントは2つ。まずは2期時点で保留になっていた、九条(四葉)理を取り巻くMEZOO"の関係性です。

四葉兄妹の再開とそれに伴った一連のハプニングによって、MEZOO"はとりあえずは解散危機を脱して3期を迎えています。しかしながら環は当時、妹の情報を隠されていたことよりも「壮五に信頼してもらえていなかったこと」にショックを受けています。

僕の記憶上では壮五と環がその事実を共有したシーンはなく、結果として壮五はあの時「環が何について一番怒っていたのか」を、正確に理解していないのではないかと思っています。

昔に比べれば少しずつ良い方向には向いているものの、まだまだ理想的なコミュニケーションが取れているとは言いにくい。そんな印象のMEZZO"は、閑散とした寮が鬱々とした空気に包まれた直後に喧嘩を始めてしまいます。やめてくれ俺に効く。

ですが環が壮五の欠点を指摘して良い方向に進めようとしたことからは、彼の大きな成長を感じ取ることもできました。今までは感情に一直線で良くも悪くも他人に無頓着だった環が、人にアドバイス(※しかも的確)するのは素直に驚きと言ったところです。

ただ話題のチョイスがどうしてもいざこざになりやすいものでかつ、言い方がまだまだ洗練されていないのが綱渡りで。状況的には一度それが悪手に転んで、2人の言い合いが始まってしまいました。

とは言うものの(逆説が多いな…)この喧嘩は環が主導を取っていたこと(※どちらかと言えば壮五に非がある内容)と、互いに言いたい想いが明白であったことが功を奏します。思ったことをオープンにしすぎるという環の特性も相まって、奇しくも理想的なやり取りがそこに体現されたのです。

今の環は非常に素直で、人から言われたことをスポンジのように吸収する逞しさを持っています。その上で壮五への信頼もありますし、彼としては「そーちゃんが言うんならそうなんだろう」と受け止める気持ちを常に持っているのだと思います。

「うるせぇ言い訳しろっつってんだよ!」

だから環は壮五に、本音で言い訳してぶつかってきてほしかったのでしょう。

変に考えすぎて結果失敗するという事態に陥る前に、真正面から気持ちをぶつけてきてくれればちゃんと理解しようと思っていたのです。

「誤解したまんまじゃん!あんたのこと!!」

それなのに壮五はその気持ちを覆い隠したまま、合理的な"正しさ"を追求して空回りしてしまって。それだと本当の気持ちも分からないし、言ってくれないということは「そういうヤツなんだ」と思わざるを得ない。環はそんな失望感をどこかで感じていたのかもしれません。

自分が振ったアドバイスへの返答に声を荒げ、結果として壮五の本音を引き出した。それによってMEZZO"はようやくあの時の軋轢を一部解消し、互いを理解し合える関係の土台を創り上げることができました。

「…MEZZO"は仲良しで羨ましいです」

伝えたいことを伝えられずにいる者と、聞きたいことを伝えてもらえない者。

そのすれ違いによって問題が起こっているという見方では、MEZOO"と三月・大和の諍いは方向性を同じくしています。それなのに双方がぶつかり合った結果生まれたものは、真逆と言って内容でした。

それは抱えている内容や物事が違う以上、等しく扱って良いものではありません。けれど状況だけを整理した時、諍いから良い結果を生んだことをもって、MEZZO"のことは「仲良し」と肯定してあげるべきだろう。ナギの言葉からは、そんな想いが感じられる気がしています。

陸と一織の微笑ましい喧嘩

寮で巻き起こったもう1つの事件。それは七瀬陸と和泉一織の電話越しの喧嘩です。

何となく話し出したことが全て悪い方向に行ってしまうという状況下。収入的には「寮で暮らす必要はない」→「大和は出て行くかもしれない」という結論にいても立ってもいられず、陸が一織に電話をかけたことが発端となりました。

別に誰かが寮を出て行くことは解散や脱退とは全然関係がないのですが、やはり心から「みんな揃って」にこだわる辺りがアイドリッシュセブンの愛らしさだなぁと思います。

しかし蓋を開けてみればその内容はあまりにも支離滅裂です。って言うか天にいはどこから出てきた?飛躍がすごい。いや兄弟絡みの話に敏感なのは分かるが…分かるか?

喧嘩喧嘩また喧嘩と、とにかく喧嘩尽くしで進む3話~4話の中では、比較的ライトめな言い諍いになっています。元々タイプの全く違う2人ですし、関係性に禍根が残っているわけでもないので当然と言えば当然ですね。

対比的に見れば「伝えたいことを正しく伝えられない者」と「その気持ちを上手く受け止めきれない者」のいざこざなので、やはり三月と大和の喧嘩に通ずるところはあると思います。

三月と大和については、2人の喧嘩だけで話を解釈しようとするとかなりしんどく、どこをどう見てあげれば良いのかを分解して考えるのも難しいです。

ですがその直後にMEZZO"と陸・一織という正の方向に動く喧嘩が展開されることで、2人の気持ちや立場を違った角度から受け入れやすい構造になっています。加えて「喧嘩とは雨降って地固まるものだ」という、未来へのメッセージ性も含まれているように思います。

ま、まぁ陸と一織が雨降って…なのかと言われるとちょっと違う気もするのですが(論理破綻)ただ彼らの場合は「喧嘩するほど仲が良い」がそのままハマる関係という感じですし、喧嘩をポジティブなものとして捉える心構えを作ってくれたように思います。

関係性を上手く使って、洗練された筋書きを生み出しているのが『アイドリッシュセブン』のストーリーの大きな魅力。一見ただの微笑ましく馬鹿馬鹿しいだけのシーンも、こういった丁寧な構成の一部として取り入れられるのだと感じます。

これらを踏まえて三月と大和が、アイナナの7人がこの後どのような場所に行き着くのか。それを期待と不安を込めて、見守らせてもらうことに致しましょう。

大和と千

第4話を語る上で外せないのが、Re:valeの千を取り巻く出来事です。

2期終盤までの千はミステリアスで何を考えているのかよく分からないと言ったイメージでしたが、3期ではその根元の人間性がフィーチャーされるシーンが増えてきています。

その結果あの振る舞いで実はさほど裏表を作るタイプではなく、自分の信念や言葉、表現を実直に前に出して行く人間であることが分かってきました。ちょっと遠回しな言い方を好むのも計算でやっているのではなく、天然で発動させてしまっている空気感です。

美麗すぎる容姿とその性質で周りからは掴み処のないイメージを持たれているものの、ちゃんと付き合えば付き合うほど感情的で分かりやすい人だと気付くのかもしれません。

万理が塩対応をベースに彼を想っていることも、百が千を心から慕って一緒にいることも、千が癖があるだけの優しい人間であるということを理解しているからでしょう。そんな千を中心としたRe:valeの関係は、個人的にとても注目度の高いポイントになっています。

ですがこの4話で展開された物語、寮を飛び出した二階堂大和とのやり取りにおいては、それが必ずしも良い方向に進むものではありません。そこまでの深い関係性は、まだ2人の間に存在していないからです。

正直すぎる千の物言いはグサグサと大和の心を穿ち貫き、彼の内に秘めたる情念を暴走させるところまで陥らせてしまいます。

千としても何とか大和を前向きにしてあげようと動いたのでしょうが、その言い方と内容があまりにもあまりにも過ぎてあまりにもとしか言えないのが厄介で。失意の陸に「アイドルを辞めた方が良い」と言いに来た九条天を上回る逸材と言わざるを得ません(けど改めて思い返すと良い勝負かもな…)

万理も百も裏ではそういうすれ違いを乗り越えて「千の良さ」に気付いたのでしょうから、2人とも懐が深いことだなぁと思います。これで意外と一番社会不適合者なキャラなのかもと思えてきました。

しかも今回の場合、千が大和のことを「表現者の同胞」と見て言葉をかけているのが状況をより悪化させてしまいました。

3話,4話の流れにおいて、千が表現者として非常に強く大きな信念と誇りを持っていることは明らかでした。監督に言われた「根っからのアーティスト」という言葉通りに、全ての物事を表現と紐付けて思考してしまうところがあるようです。

故に彼は一流の表現者足り得ます。その信念にルックスなどの生まれ持った才能が付加されて、Re:valeの片翼として全アイドルの頂点に君臨しているのです。あの月雲了でさえ、千の才能を評価している気配がありました(※第2話の百との取引交渉から推察)

生まれによって類い稀な才能とコネクションを有し、新進気鋭のアイドルグループの一員である大和も、千からすれば自身と近しい境遇にある存在なのだと思われます。だから千も大和には、より自身に近しい者として助言と気遣いをかけて行っていると感じました。

しかしながら、今の大和がそれを望むべくもありません。その出生と才能のせいで仲間たちと仲違いをし、皆に迷惑をかけて寮を飛び出した。年長者として、リーダーとして振る舞ってきたにも関わらず、グループを最低な状況に陥れる原因その物となってしまった。それが今の状況を作った理由だからです。

その事実がベースにある以上、表現者の才能という呪いは現在進行形で大和の心を侵し続けています。

しかもあろうことかその不手際を実父である千葉志津雄と比べられでもしたら、さすがに黙っていることなどできるわけがありません(※こんなヤバい煽り方を素でしているとしたら開いた口が塞がらないのである)

表現者の不幸

表現者として成功し愛されることは、生み出した創作物、体現したエンターテインメント、大衆に作られたイメージが評価されるということです。千の言う通り、それが評価されることは"人間"として愛されることとイコールではありません。

表現者とは常に誰かに否定され、ふるいにかけられる職業です。就職活動や受験に失敗しても、人格が否定されたことにはならないとよく言いますが、表現者とは一生その苦痛と闘い続ける運命にある人種のことを指します。

よって彼らは"表現"と"人間"を切り離すことで、自身の心の安寧を保ちます。そこから転じて「"表現"が評価されているのなら、人間的な評価は必要ではない」と割り切った人が現れるのが芸能界です。そこまでストイックに思い込める人にほど、常人には見られない高みに到達できるとも言えるのでしょう。

千はそういった表現者的な考え方をして大和に前を向かせようとしましたが、残念ながら大和にその言葉が正しく届くことはありません。大和が「人間として愛されること」を強く望んでいる青年だったからです。

それは彼自身が、望んでその才能を手に入れたわけでもなければ、望んでこの世界に入ろうと思ったわけでもないからでしょう。出生に悩み、家族を怨み、心に満たされないものを抱え続けてきた大和にとって、最も重要視すべきものが"人間"であることは想像に難くありません。

人間とはいつだって無いものねだりをしてしまう生き物で。普通の家に生まれた者ほど特別を目指し、特別な家に生まれた者ほど普通を手に入れたがる。その理不尽は、時も場所も関係なく多くの人たちを苦しめ続けてきたものです。

ただし誰しもそれが贅沢な望みであることもまた、感覚的に理解してしまえるところがあります。だからこそその生き方に悩む者ほど、他人からの正論が心に突き刺さる。遠ざけていた自分の情けなさや醜悪さを目の前に突き付けられるような気がして、否応なく心の闇を増幅させてしまうのです。

「それ以上…酷いこと言わないで…」

千の首を締めながらうわごとのように台詞をぼやく二階堂大和。この時吐露された感情は、彼自身のものだったのか。それとも今自身を投影している役のものだったのか。この時点ではそのどちらとも言えるような気がしました。

それだけ役に取り込み、役に取り込まれる才能と資質を、彼は持ってしまっていると思うからです。

「俺が間違ってても…優しくして…」

それは今この瞬間における大和にとっては、"不幸"と呼んで差し支えない才覚なのでしょう。自我を明確に暴走させるほど心が追い詰められている原因は全て、それとセットで彼と共に在るものです。

自身が役者として類い稀な才能を持っているという事実を理解すればするほどに、胸の内のドス黒い感情も増幅されていく。そこから彼が抜け出せるとしたら、それは彼自身が自分を肯定してあげる以外の方法はきっとないのだと思います。

ですがそのために必要な光ある存在を、大和は今そばで感じることができているはずです。

彼が恐らく初めて「誰かのために」を考えるキッカケとなった仲間たち。アイドリッシュセブンのみんなは、人間 二階堂大和が帰ってくるのを待っています。

遠くない未来で彼がそこに辿り着けることを願って。第4話の感想記事は終わることに致します。想い想われが最悪を導いてしまうこの物語で、確かな到達点を描いてくれる瞬間を、僕もまた待ち望んでいます。

おわりに

最悪の終わりを迎えた3話から発展して闇に堕ちて行くアイドルたちが描写された第4話。

センセーショナルなシーンはやはり多く描かれつつも、3話に比べれば冷静に見ることができたかなぁという感じです。熱量ゴリ押しに弱いものでな…うん…。

「3期は覚悟して見た方が良い」と言われているので、この先でさらに底を抜いて行くのか、ある程度は浮上するのかもまるで見当がつきません。

普通のアニメなら下がり続けるということはないはずなのですが、『アイナナ』は2期でも中盤まで良いことが1つも起きない回が続いたことがあるので油断できない印象です。

そんな気持ちを持ちながら盛り上がってきた3期をどんどん見進めて行きますよ!アニメとしても着実にエンジン吹かしてきてくれていて、どんどん楽しくなってきましたね。今後とも引き攣った笑いを浮かべながら楽しみます!

それではまた次回の更新で。超感想エンタミアのはつでした。リアルタイムな反応が魅力の動画の方もよろしくお願い致します!

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はつ

『超感想エンタミア』運営者。男性。美少女よりイケメンを好み、最近は主に女性向け作品の感想執筆を行っている。キャラの心情読解を得意とし、1人1人に公平に寄り添った感想で人気を博す。その熱量は初見やアニメオリジナル作品においても発揮され、某アニメでは監督から感謝のツイートを受け取ったことも。

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