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【ミリしら超感想】『アイドリッシュセブン』1期総括 IDOLiSH7の始まり 現実に抗う少年たちの讃歌

2020年10月9日

四葉環

マイペースなプリンハンター。
色んなことに疎い割に色んなことに興味を持つ少年で、他の人がとても聞けないような話をストレートに切り出すのが何かと恐ろしい。

しかしその投げかけが物語を動かすキッカケになったり、考えもしなかったことを考える時間を生んだりもしてくれるため、『アイナナ』の物語において無くてはならない存在だと思います。

MEZZO"の一員として先にデビューしたこともあり、一期では取り分け存在感があるキャラクターだったのは間違いありません。特に後半は、彼の発言や行動によって物語が劇的に進行することが多かった印象です。

生き別れの妹を探すため「テレビに出られるから」という理由でアイドルになった彼は、良くも悪くもアイドルとして力が抜けています。それが評価を受けた理由であるのだろうし、転じて凄まじいトラブルを生み出しかねない危うさにも繋がっています。

理由が理由だけに、全話通して誰よりも芸能界の闇に翻弄され続け、「個人」と「アイドル」の狭間で苦悩を余儀なくされた不憫な少年。それ故にキャラとしての振れ幅は大きく、1期では最も多面的に成長した(させられた)キャラだと言えるでしょう。

ですがまだまだ精神的には幼さがあり、何をしでかすか分からない不安定さが解消されたわけではありません。終盤では妹に認知されたこともほのめかされていて、まだまだ波乱万丈の活躍を見せてくれそうです。

「いやお前、本当な…?」と思ってしまうシーンが幾つもありながらも、根が素直で真面目で優しい人間だからこそ憎めない。そこがまた愛すべきポイントの環くん。ズバッと良いことを言うシーンも多く、その先鋭性が光っていますね。

逢坂壮五

真面目で容姿端麗、IDOLiSH7の中では年上の方でもあり、大人の魅力も感じられる好青年。

MEZZO"として先んじてデビューしていますが、1期では目覚ましい活躍を見ることはできず。どちらかと言うと常に憂いを帯びた雰囲気を持ち続けている壮五くん。

限界を超えて頑張れてしまう上に、その気苦労を外に感じさせない苦労人気質。

確実に生きていて損をするタイプだが、本人にそういう自覚もあまりないように思えます。

その生い立ちからIDOLiSH7の活動に大きな壁を否応なく作ってしまったことなど、人間的にも立場的にも解消すべき問題が最も多いキャラクター。しかしそのどれもが一朝一夕でどうにかできる内容ではないため、1期では「抱えるもの」の提示に留まりました。

まだまだ自身が「どうすべきなのか」「何がしたいのか」が明確になっているわけではなく、今のところは「皆が受け入れてくれているから」という理由を拠り所にして、アイドル活動に一直線になれています。

ただしそれも"今のところは"に過ぎず。最終的には、その心情に完全な折り合いをつける必要があるのでしょう。心の奥底にある迷いが、今後の彼の行動の足枷となるタイミングも出てくるはずです。

怒りが臨界点を迎えると静かに全ギレする一面も持っていて、感情のコントロールが曖昧なところがあります。逆に言うとそれは、感情的になれるタイミングはあるということでしょう。

そういった自身の本音を少しずつ正しい形で表現できるようになれば、彼は楽ができるようになるような気がします。無理しすぎずに、頑張ってほしいですね。

六弥ナギ

アニオタイケメン。
全キャラで一番女性向けしているが、一番女性向けしていない人。

その少々浮世離れしたテンションは、苦難に挫けそうになるアイナナのメンバーを幾度となく救ってくれました。

絶対何かワケありの青年だとしか思えないものの、1期ではその内側は匂わされるのみでスルー。行動力、行動範囲、人脈、知識と教養など、持っている要素があまりに多すぎるため「結局どんな人なのかさっぱり分からない」まま終了した印象。

しかしながら、アイナナのメンバーに向ける気持ちの強さ、矢印の大きさは間違いなく本物です。ユニット全体と言うよりも「7人それぞれ」を個人個人として全員等しく大事にしているように見えており、全キャラの中でも取り分けメンバーへの想いが強い人間だと感じています。

過去に知り合った伝説のアイドル『ゼロ』の作曲家と知り合ったことが巡り合わせとなり、日本にてアイドル活動をすることに。ここでも友人の想いを遂げたいという、気持ち優先で動いているのが分かりました。

何から何まで謎だらけですが、そのテンションと気持ちでアイナナを引っ張ってくれた影の(?)功労者。逆に個人的な活躍やパーソナルな部分は1期ではほぼ見られなかったので、彼が抱えるものの存在にも目を向けられたらと思います。

七瀬陸

アイナナのセンター。歌が上手い。

呼吸器系の疾患のせいで、フルパワーを出せる環境と時間が限られる弱点を持っています。病弱設定自体は珍しいものではないですが、いわゆるセンターが病弱なのは珍しい気がしますね。

この疾患と兄弟関連で話を動かした序盤のキーマンで、弱点とコンプレックスを克服しつつある後半ではアイドルとして1つ吹っ切った活躍を見せてくれています。

過去と折り合いを付け、憧れの兄であった九条天とも新しい"対等な関係"を築き上げることに成功。1期の中では前向きな結末を迎えたキャラの1人で、今後の活躍に期待が高まります。

懸念事項としては、センターとしてまだまだ全体を引っ張れているとは言い切れないところでしょう。

特にアイナナは先にデビューしたMEZZO"の2人のファンに支えられているところは大きいと予想され、一部からは「どうしてセンターが陸なのか」と思われているのでは?と感じます。

1人の人間として、アイドルとしての成長は感じられましたが、7人のアイドルグループのセンターとなるとまた話が変わってきます。今後、陸が「センターである」ことを意識させられる場面に遭遇する可能性は高く、それとどう向き合うかはIDOLiSH7の1つの試練になって行きそうです。

その重圧を乗り越えた先で、初めて彼は自信を持って皆を引っ張るアイドルになれる。そんな気がします。兄と比較されることもあるでしょうし、まだまだ挫折と困難をたくさん経験しそうな危うさがある少年です。

八乙女楽

ライバルグループであるTRIGGERのメンバー。
事務所社長の息子でありながらアイドルでもある。なかなか難しい関係性の中にいる青年。何故かそば屋をやっていて、正直意味が分かっていない。

アイナナに興味を持ち、芸能界で活躍するためのキッカケを用意してくれるなど、冷徹そうな見た目に対して割と感情的に動くことが多いのがこの楽さん。その裏には父親への反抗心もあるのでしょうが、どちらかと言うと、彼は元来持っている本質的な優しさで動いているようです。父親とはえらい違いだ。

アイドルとしては「抱かれたい男No.1」に輝く実力の持ち主。あのルックスに俺様気質の性格と典型的なモテアイドルという感じですが、普段の活動から不意に見せる優しさがファンを虜にしてしまうのかも?

紡とも交流を持ち、TRIGGERとアイナナの関係性を大きく進展させてくれそうな気配も感じさせています。

TRIGGERは1期ではメインで扱われたわけではないので、2期での活躍も楽しみですね。個人的には結構TRIGGERが好きな感じなので。

九条天

プロ意識は作中最高。
七瀬陸と生き別れの兄弟であり、その背景はまだまだ謎が多い天にぃ。

元々は身体の弱い陸を励ます明るいお兄ちゃんだったのが、両親の仕事の都合に巻き込まれる形で才能を買われ、九条姓に。「家族を捨てた」と揶揄されることも厭わないその選択には、並々ならぬ覚悟が感じられます。異常なプロ意識の高さも、そこにルーツがあるのでしょう。

まだまだ駆け出しだったアイナナにプロ意識の根源を授けた少年でもあり、元を辿ると彼に行き着くとも言える存在感があります。ファンを絶対に喜ばせることに固執するそのスタイルは、ある種の狂気すら感じるものです。

その仕事へのドライさから全く人間味がないように思われましたが、実はその逆。彼は身内に対して強い感情を向けすぎてしまうからこそ、徹底して仕事関係を割り切ろうと考える少年でした。

自分が感情的である自覚があるから、それを出さないように努力して自分を演出しているのが健気で。結局そういうものが最後に漏れ出してしまうというところまで含めて、愛せるキャラクターに。後半でTRIGGERの存在軸をガラリと変えたのは、彼の想いと言葉でもありました。

TRIGGERは見た目はつっけんどんとしていてビジネスライクな空気感がありますが、実は3人とも仲間のことをすごく大切にしているという理想的な関係性です。

特に天は隠された(提示されている)設定が非常に多いキャラクターなので、今後の物語での立ち位置がどうなって行くか楽しみです。

十龍之介

セクシーワイルド系…で売り出されてしまった普通の人。

本当の自分と外に出している自分のキャラが全く違うという、ある意味では一番アイドルらしいアイドルを演じているのがこの龍之介くん。実は1期の中では『アイナナ』のアイドル最高齢らしい。

アニメではアイドルとして活躍する姿をあまり見られないので、どちらかと言うと温厚でいつもニコニコしているイメージが強いですね。

自分の本質と異なった役割を演じ切ることができるというのは、アイドルとしてはこの上ない才能だと思います。そこを買われている面もあるのでしょう。

しかし彼自身はその扱いや立場には困惑を隠せない様子。できなければできないで辛いのでしょうが、彼の場合、できてしまうが故に「これで良いのか」と悩んでしまうところはあるのでしょう。今になってキャラ変するのも難しい状況でしょうし。

TRIGGERは(社長がクソ野郎なことを除けば)ユニットとして表でも裏でもかなり安定していて、龍之介があえてキャラを変える必要はない状態。つまり納得して活動するのか、路線変更を試みるのかは、本当に彼の意向次第といった側面があるように思います。

故に今後どのような行動を取るのかが全く分からないキャラでもあり、何かと興味をそそられる存在でもあります。TRIGGERの方向性を左右するのは、意外とこの龍之介だったりするのかも。

小鳥遊紡

かわいい。

本当にプレイヤーキャラクターか?と思うほどにかわいい。彼女がバタバタと動き回っていることで、全体的に少女漫画感があるような気がします。

前半はまだアイナナが大きく動ける状況ではないこともあり、物語を動かす中心人物のような活躍ぶり。マネージャーとして精力的に活動する姿が見られます。

後半ではアイナナの1人1人がしっかりと個性を持って仕事できるようになるため、活動内容は縁の下の力持ちへと移行。それに伴い、登場シーンは少しずつ抑えめになって行った印象です。

ゲーム上のプレイヤーキャラクターをどのように動かすかは、ソシャゲ発の作品における1つの課題。作品ごとに個性が出る部分でもありますが、『アイナナ』はストレートに女の子キャラクターを登場させる方針だったようです。

話の主軸には出しゃばりすぎず、かと言って存在感がないわけでもない。あくまでアニメ『アイナナ』は男の子の物語ですが、その実、彼女がどう動いているかが確実に物語の中に響いてきています。

ストーリーを大事にした作品ですから、紡ちゃんも与えられたストーリー上の役割をしっかりとこなす形で活躍している印象です。

彼女が必要な部分で的確な仕事をして、アイドルたちを輝かせる。そこに十全な説得力がある働きをしてくれています。

彼女も1人の登場人物としてしっかりと息づいているんですよね。そういうところに「創る側の都合」が見えてこないのが、この作品の大きな魅力だと思います。

おわりに

というわけで一期の質感を1記事で総ざらいしてみました。お楽しみ頂けたでしょうか。

2期はできれば1話ずつ書いて行きたいと思っていますが、既に3話まで放送済み。何とか本放送中に追いつけるように記事を書き進めて行こうと思います。

『アイドリッシュセブン』は「無名アイドルがコツコツと伸し上がっていく物語」としてのリアリティを追求しながら、爽快感のあるサクセスストーリーとして成立しているのが魅力的です。

彼らのような発展のし方をすれば、このタイミングでこういった出来事があり、きっとこういう反応を示してしまうだろう。その1つ1つにキャラクターらしい説得力があり、ストーリーを追いながらもしっかりとキャラが生きる物語に仕上がっています。

一幕一幕が丁寧に積み上げられていて、階段を着実に上っていくような安心感がある。王道を踏襲しながらも、しっかりと彼らだけの物語が出来上がっていると思います。

その下地の上で展開される2期には、より残酷で苦しい展開も待っているのでは?と感じています。勝者になったからこそ降りかかる悪意もあります。それは今まで以上に大きく過酷なものであるはずです。

この記事を書いてから2期は見始めようと思っていますので、まだ内容は全く分かりません。そちらも楽しめたらと思います。

それでは1期の記事はこの辺りで。よろしければ記事にもお付き合い下さいませ。また近いうちに。

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はつ

『超感想エンタミア』運営者。男性。美少女よりイケメンを好み、最近は主に女性向け作品の感想執筆を行っている。キャラの心情読解を得意とし、1人1人に公平に寄り添った感想で人気を博す。その熱量は初見やアニメオリジナル作品においても発揮され、某アニメでは監督から感謝のツイートを受け取ったことも。

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