アニメ 単話感想

『キンプリSSS』9話感想 アレクサンダーが創造する新たな煌めきの形

2019年4月24日

プリズムショーの"破壊"者

「大和アレクサンダー…下衆な真似は許さんぞ」
「俺はもう…昔とは違う」

法月総帥にも念を押され、ジョージには輩扱いされ、エデロ生達からは「また会場を破壊するかもしれない」と警戒心MAXの目で見られる。本人の心意気とは裏腹に、PRISM.1の舞台に立つアレクの対外的評価は最悪なままだったと言えます(当然ではありますが)

ライバル視し合う関係になったタイガは闘争心を剥き出しに。アレクもどこか煽るような目線を彼に向けます。

そんな中で「あいつ、今日は大人しくショーを見せてくれるんだろうな」とどこか彼のやりたいことを理解しているような態度を見せたのが俺達の仁科カヅキ。

ストリートのカリスマ故の余裕か、PKCで彼に何かを伝えられた確信があったのか。アレク本人には伝わっていないものの、警戒ではなく期待を持つカヅキの存在は、物語上で彼のやりたいことを後押ししてくれていたと思います。

意を決して始まるアレクのショー。
なんと開幕はマイクスタンドでしっとりと歌い上げるという全く新しい形で我々の度肝を抜いてきました。前作同様、攻撃的な衣装に身を包んでいたこともありそのギャップは凄まじい。

「no no  cry more」
「泣かない 想い出 作ったら?」

しかも歌われたのはTRFの名曲「survival dAnce ~no no cry more~」のカバー!黒川冷リスペクトの彼は、あくまでカバー曲にこだわった選曲で勝負しに来ました!

その歌い出しが過去のアレクの心情とリンクしているのはもちろんですが「survival dAnce」は正真正銘「他人を楽しませる曲」というのが何よりも重要ではないでしょうか!バトルで人を屈服させることを是としてきたアレクが、分かりやすい形で他人とエンターテインメントを共有することを選んだのです!

マイクを蹴り飛ばし、笑顔で「yeh yeh yeh  yeh yeh wow wow wow wow」するアレク。楽しそうに客を煽って会場を盛り上げる彼の成長を感じられる姿に、心打たれた方も沢山いらっしゃるのではないでしょうか!

そのまま彼が披露したのはウィンドミルレビテーション!浮いてる!

劇場版で披露したヘッドスピンレビテーションは観客に恐怖を与えるものでした(爆風が観客に及ばないように風を起こしたらしいが…)が、今回は彼の純粋なパフォーマンスの一環として披露!

「カヅキさんの猿マネか…」
「いや違う!」
「あれは黒川冷だ!」(突然の聖)

ウィンドミルは黒川冷の得意技!それをカヅキがリスペクトし、アレクもまたリスペクトした。ここでそれに気付けなかったタイガは、やはりあくまで尊敬するカヅキを通してストリート系を志しているのであって、冷にさほど高い関心を持っているわけではないのが分かります!

すかさず繰り出されたプリズムジャンプは重力を感じさせない衣装からファンネルを分離させ(!?)レーザー光線を射出するという、相変わらずアニメを間違えた大胆すぎる演出!

それを会場破壊行為と受け取ったタイガは、何かを感じ取っていたカヅキの制止を聞かず一心不乱に飛び出します。

単純にタイガの気持ちが逸りすぎてしまったとも取れるシーンですが、PKCではほぼ不意打ち気味に行われたアレクの破壊行動を未然に食い止めることができなかったことにタイガは責任を感じていたと思いますし「何かが起きる前に止める」という判断になったのは仕方がないとも思います。そういった気持ちを持っていることも、アレクの思惑通りだったのかもしれません。

バトルスーツに着替えたタイガに対し、そのままの衣装で応戦するアレク。バトルを主目的にしたプリズムショーではないことがここからも伝わってきます。

アレクだけが辿り着いた新たな「ストリート」の形

準備を整えた2人は当たり前のようにステージから観客席に飛び込みます!PKC以来因縁となった2人の戦いが幕を開ける!

「プリズムラーッシュ!!」

なんといきなりシン以外では初となるプリズムラッシュを披露!しかも2人同時!ですが!何か雲行きが怪しい!!

「プリズムバトルの新機能だ!」

What's!?

「先にゴールラインを潜った方が先攻になる!」

先攻!?

突如として始まったアレクとタイガのレース!現行アプリ「プリズムラッシュLIVE」のプレイ画面を完全に再現したファンサービスを交えた演出!ですがとりあえず意味不明!

「スリップストリームに入ったぞ!」

流石に言いたい(書きたい)だけだろ!

「いけええええ!タイガー!!」

い、いけええええ!!(?)

レースは僅差でタイガが勝利!先攻!
繰り出すのは「天上天下 唯牙独尊 改」!ワッショーイ!一体我々は何を見せられているんだ!?

間髪入れずに繰り出されるアレクのプリズムジャンプは、鉄球をモーニングスターめいて投擲するまたも豪快な攻撃技!しかし、頭についているのは鉄球ではなくミラーボール!アレクはまだ「この先のショー」を見据えているのが分かります!と言うか先攻は!?先攻って何だった!?

「そんな爪楊枝ごときィ!!」

前作では相打ちに終わった木刀を一方的に粉砕!しかしタイガの「改」もそれだけで終わらない!砕かれた木刀の中から登場したのは新たな刀!追加で繰り出すのはバーニングソードブレイカーリスペクトの衝撃波攻撃!

「これが改の力だッ!」
「クッ……!」

それをギリギリのところで回避するアレク!今までバトルで一度として見せることがなかった焦り顔をここで初めて見せました。タイガが成長した故か、バトルスーツに着替えなかった不自由さから来るものか、この時点ではタイガが優勢に見える展開!

タイガの直接追撃に対し、アレクは辛くも敵に背を向けることに!当然ここで終わる彼ではない!ありとあらゆる筋肉をイジメ抜いた彼の身体であれば、背中だって重要な武器に変えられる!

鋼鉄に鍛え上げられた彼の背筋が、タイガの「改」を弾き飛ばす!ここで一気に優劣が逆転だ!最早何が何だか分からない辺り『KING OF PRISM』!今俺も勢いで書いてるぞ!

アレクが続いて繰り出したプリズムジャンプは黒川冷の必殺ジャンプ「EZ DO バーニング」をリスペクトした分身技!『キンプラ』の「トリプルシックスの黙示録」の時点で「この分身は黒川冷リスペクトなのでは?」と思ってはいましたが、今回は分かりやすい爆発演出を加えてくれました!

タイガは「修羅場返しMAX」でそれに応対!
しかし今回弾き返すのは爆弾ではなく、アレク本人だ!団扇の風圧を物ともせず、一直線にタイガに向かうアレク!自爆する気か!?

アレクをはじき返すことは適わず、正面から衝突するタイガとアレクを大爆発が包み込む!さぁ今日の勝敗は!?

「また会場が…」
「いや…大丈夫だ」

全てを悟っているカヅキ先輩は余裕の表情。そんな顔してるとまたミスコンに出場させちゃうぞ。

爆発が明けると、会場中を包んでいたのはライト化したファンネルの光と、それに照らされて光るミラーボール。そして、最後の爆発を利用して放たれたであろう色とりどりの花火たち。アレクは最初からこの光景の実現を狙っていたのです。

「バトルを…エンターテインメントにしやがったのか!」

アレクが選んだのは、カヅキのようなアカデミーとストリートの融合によるエンタメ化ではなく、あくまでバトルにこだわることによるプリズムの煌めきの体現でした。まだ誰も為し得ていない、ストリート系一筋で観客を沸かせることにチャレンジしたのです。

それは、かつて母親が行っていたプロレスに通じるものがあります。人に魅せることを意識しながらも、決して真剣勝負という土俵を降りない。それをプリズムショーと融合させる、難しい道を行くことを彼は選んだ。

「これじゃあ俺がダシに使われただけじゃねぇか!?」

タイガはアレクを止めようと思って乱入したはずなのに、逆にアレクのやりたかったことに協力してしまう羽目になってしまいました。そしてアレクも、タイガであればきっと飛び出してくると期待していたし、彼となら最高のバトルエンターテインメントを観客に届けられると感じていたのでしょう。

アレクのソロショーが見られると思っていたキャラファンの方々にとっては、大なり小なり歯がゆい演出だったと思います。僕も「お前マジで出てきちゃうんかい!?」と最初は思いました。それにカバー曲を用いたショーであったことも、賛否が分かれる点だと思います。

ですが今回のアレクは最初からソロショーで盛り上げる気はさらさら無く、バトルでの盛り上げこそが彼の望んだ理想でした。そしてあくまでも黒川冷へのリスペクトを中心に置くことも、彼にとってのベストな選択であったと考えます。

アレクが「自分ができる最高のショー」を突き詰めた結果が"これ"であると十二分に伝わってくる内容だったため、これにはこちらも納得させられてしまうというもの。それを踏まえた上で行われるソロショーが見られる時を待つのもまた一興かと思います。

「仁科カヅキ!」
「次はお前を倒して、ストリートのカリスマの称号は俺が頂く!」

黒川冷に認められたショーで、自分だけのストリート系で観客を楽しませたアレクは、今までにない最高に清々しい笑顔でカヅキに言葉を投げかけます。

自身の在り方を確立した彼にとって、カヅキのストリート系もまた「1つの在り方」として容認することができるようになったのでしょう。だからカヅキのことを現在の「ストリートのカリスマ」であると認めてこの宣誓をすることができた。あってはならない仇敵ではなく、自分のストリート系で超えるべきライバルになったのです。

それを苦笑いで受け止めたカヅキの心境や如何に。ソロショーもですが、カヅキとの直接対決での決着も見てみたいところですね。

空にまっすぐ突き立てた人差し指は、アレクの更なる飛躍を感じさせるものでした。プリズムショーの破壊者、大和アレクサンダーは、今までの常識を見事に破壊して行きました。

創造の前には破壊がある。『キンプラ』ではアレクが破壊したものを、カヅキが『創造』するという関係性が描かれました(監督談だったはず)今回は彼の破壊の先で、彼が創造したものを見ることができました。今後の彼がどんなショーを見せてくれるのか、ますます楽しみです!

外典①タイガの挫折が意味するもの

アレクの成功の裏側で、タイガには厳しい現実が突き付けられる1話となりました。

今回は完全にアレクの思惑通り。
カヅキの言うように、アレクがタイガを一枚も二枚も上回る結果。そしてタイガはショー妨害によりスコア半減の処理を受けることになり、チームに多大な損失を与えてしまうことになりました。この内容は、タイガ推しの方々にはかなりきついものもあったでしょう。

しかしタイガ回の記事で書いたように、タイガはまだカヅキの後追い状態から抜け出すことができていません。1話~9話を通して見ても「依存しない個人の成立」からは最も縁遠いキャラとして描かれていたと思います。

対してアレクは黒川冷をリスペクトしながらも、彼にさえ為し得なかった「自身だけのストリート系」を突き詰め、エンタメ化することに成功しました。実際、本作におけるキャラの成長度合いを考えても、アレクの方が1歩先を行っているのは確かです。今回のバトルでは、ここの差を結果として如実に突き付けられた形でしょう。

迷いを振り切って立ったPRISM.1でのタイガのショーは最良のものでしたが、カヅキの後を追うことに満足してしまったことで、これ以上の成長は望めなくなったとも言えました。

この経験と挫折は彼を更に一歩先のステージへと導いてくれるもののはずです。タイガの更なる活躍に期待しましょう。

ストーリーの創りで言えば、アレクとの関係性の提示も含めて、続編への周到な布石打ちと言ったところ。相変わらずやることに余念がない。新作が楽しみですね!!

外典②法月仁とストリート系

9話は法月仁についても様々な新情報が投げられた回でした。

ここでまずチェックしておきたいのは、仁が自分からアンテナを張ってアレクをスカウトしていたということ。

冒頭に見ていたデータでストリート系の発展が示唆されていたことから、PRISM.1におけるアレクの重用はそれ由来であるかのように思えました。しかしその後に出たスカウトの事実によって、仁は数年前からストリート系に何らかの関心を持っていたことが明らかになったのです。

ストリート系を毛嫌いしていたはずの仁ですが、実際はしっかりアンダーグラウンドな場所まで突き詰めてストリート系スタァをわざわざ招き入れていたようです。それもアレクが二つ返事ではなく「条件がある」と言ったにも関わらずです。要求に応えてでもアレクを招き入れたい理由があったということになります。

好き嫌いで才能を判断しない仁の有能さが垣間見えますが、過去にエーデルローズ主宰であった頃は入所希望者である小学生のカヅキに対し「アカデミー系に教育し直す」という旨の暴言を吐いていました。それを考えると、シュワルツローズではそういった才能の強制さえも行っていないことから、彼の心境の変化が伺えます。

アレクのショーをしっかり見るようジョージを叱咤したり、何だかんだ言いつつもアレクを大会の出場メンバーから外さなかったり、アレクについてもスタァとして期待しているようにも思えます。

これは彼が黒川冷に対しても何かしら執着を持っていることへの伏線かもしれません。

今作は仁に何らかの救済かキャラクターとしての発展が用意されていると多くの方が感じていると思われますが、5話に続き9話もかなり大事な回であったと思います。4章でどのような展開が待ち受けているのか、期待が膨らむばかりです。

余談ですが、5話でジョージがショーの後に「ありがとー!皆のおかげです!」と言うのは仁をリスペクトしていると言われていましたが、9話でその台詞を言う仁のシーンを無理なく挿入してきたのはお上手でした。細かいところまで気を配った構成力…本当に頭抜けてるなぁと…。

おわりに

アレクはプライベートが全く不明なキャラであったことから、この9話でキャラ設定の提示、幼少期の話、親子の関係性、カヅキを憎む理由の解明、黒川冷との関係性、個人の解決、全く新しいプリズムショーと、凄まじい数の要素を一気に展開し、最終的に納得できる形にまとめ上げるという狂気を感じる1話でした。

一話内で押し込まれた新情報の多さで言えば、この9話は間違いなくぶっちぎりでトップ(3章現在)だったと思います。やっていることが多すぎる。

なので、どこかを削ると記事の中で話の整合性が取れなくなってしまうというジレンマを抱えた話であり、起こったことの全てを順番に記載する必要がありました。結果的にこの記事のボリュームが大変おかしなことになったのです。察してください。

これだけのことをしておきながらアレクの心中を慮ることができるようにストーリーと演出、映像情報が整理されていて且つ、物語が普通に面白いというのが誠に恐ろしい限りです。ここでまた『キンプリ』の真髄を見せられました。

その内容量の多さから他のキャラに比べると、アレクが心の中で思っていることが明確には台詞で表現されていない話です。なのでこの記事に書かれている内容は、解釈と言うよりほぼ想像レベルのものかもしれません。

しかし、推して知るべしとでも言いましょうか。黙して多くを語らないのがまた大和アレクサンダーのキャラクター性を象徴しているようで、非常に「らしい」話に仕上がっていたと思います。だからこそ、彼の心中は勝手にこちらで考えるべきというもの。

大変『キンプリ』らしく楽しい一話だったと思います。この記事が皆様にとって、場面ごとのアレクを理解する一助となりましたら幸いです。

先に進めば進むほど慣れてきて文章量が多くなっていくというのが物書きの宿命とは言え、この感想記事シリーズも書き連ねることに大変恐ろしい文量になってきてしまいました。いつもお読み頂いている皆々様方、本当にありがとうございます。

残すは四章のみとなりました。
過去3年を考えれば、夢のような贅沢な時間もあとわずか。寂しい限りですが、しっかり見届けてしたためたいと思います。

また別の記事でお会いできましたら幸いです。よろしくお願い致します。

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はつ

『超感想エンタミア』運営者。男性。美少女よりイケメンを好み、最近は主に女性向け作品の感想執筆を行っている。キャラの心情読解を得意とし、1人1人に公平に寄り添った感想で人気を博す。その熱量は初見やアニメオリジナル作品においても発揮され、某アニメでは監督から感謝のツイートを受け取ったことも。

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