あんさんぶるスターズ!

キンプリオタクの『あんスタ』ミリしら感想 アプリ編㉜「光輝★騎士たちのスターライトフェスティバル」

2020年12月17日

影片みかの想い

斎宮宗が救出されステージに向かっている裏では、影片みかに1つの試練が訪れていました。

スタフェスに出場するためには、原則2人以上の「ユニット」としての形式を保つことが必要。斎宮が不在で出場権限を無くしたValkyrieを救おうと動いた者がいます。

それはかつて彼らと時間を共にした仁兎なずなでした。

まだ完全な脱退が成立していない彼であれば、Valkyrieとしてステージに立つことができる。旧き仲間の窮地を救うために、彼は再び人形としての衣装に袖を通すことを選んだのです。

ですが影片にとってそれはとても看過できないことで。ユニットを捨てて「一番大変な時に傍にいてくれなかった」仁兎のことを、彼はどうしても許すことができません。

彼の立場からすれば、仁兎は怨んでも怨み切れないとしてもおかしくない相手。その反応になるのは自然で、無理もないことだと思います。むしろ影片は物凄く仁兎のことを想ってくれていたと、この「スタフェス」で逆によく伝わってきたほどでした。

アニメでの仁兎に対する影片の想いは、Valkyrieというユニット内で完結したものしか描写されていません。しかし原作では「影片みか→仁兎なずな」の個人的な気持ちはまた別に描写されており、彼は決して仁兎のことが嫌いになったわけではないことも分かっています。

仁兎に執着する斎宮に苦言を呈すこともなければ、人形としての変な劣等感を見せることもない。それどころか過去のストーリーでは、「お師さんはなずな兄ぃの話をすると怒るから」と逆に気を遣うシーンさえありました。

察するに、影片は自分個人の仁兎への想いから「Valkyrie仁兎なずな」を完全に切り離したのだと思います。

いつまでもValkyie仁兎なずなの幻想を追いかけてしまう斎宮と違って、影片はそこを完全に割り切っていたようでした。

過去のストーリーを見ていても思いますが、影片は自分で思っているよりも考える力があるし、その上でしっかりと正解を選び抜ける聡明さを持っている印象です。それが見えるから、斎宮もValkyrieの演目を彼主導にしても良いと思えたのかもしれません。

人形から選定者へ

Valkyireとしての仁兎を見てしまうと、どうしても彼を許すことはできない。だからそれはもうお互いに関係なかったことにして、純粋に彼の好きなところだけを尊重して未来を見る。それが影片みかの取った仁兎との付き合い方です。

だから、だから彼は仁兎にずっと離れていてほしかった。
Valkyrieではない仁兎なずなの未来なら応援してあげられる。そう思えるまで心をコントロールしたのに、今さらValkyrieに戻って来られたら、それもまた滅茶苦茶になってしまう。

Valkyrieから見た仁兎が裏切り者なのは紛れもない事実。それと折り合いをつけるために取った距離感を、あろうことか仁兎なずな本人詰められる。影片が言う通りそれは途轍もなく残酷な仕打ち。どんな理由があれ、拒絶されて仕方がない行いです。

それでも仁兎はあえて、Valkyrieを助け出すことを優先しました。彼とて影片に激情をぶつけられることを考慮していなかったわけではないでしょう。そうなる可能性の方が高いとさえ思っていたはずです。

相応に描写されていない葛藤が、裏にはあったと考えます。悩んだ末の結論として、彼らの未来のために仁兎は動くことを決めました。

「余計なこと」「いらぬお節介」だと言われ、今の関係さえ壊れるリスクがあったとしても、Valkyrieが駄目になってしまうよりは良い。感情だけではどうにもならない現実のために、理性ではどうしようもできない感情を受け入れる。それが仁兎なずなの考える現状のベストだったということです。

軽薄な理由でValkyrieに出戻ろうとしたわけではないことは、彼の言葉と態度を見れば分かるはず。嘘と建前で影片を嘲ろうとなどという気はもちろんあるわけがない。

だからこそ「影片みかがどうしたいか」にこの場の処遇は委ねられていました。

それだけはどうしても許せないと思っていたことが起きてしまった状況で、それさえも寛恕して前へ進むのか。それとも自分の感情を優先して、差し伸べられた手を振り払うのか。

どちらも「今のValkyrieを守りたい」という意志を孕む選択で、影片の気持ちを思えばどちらが正しいと言うべきことではありません。

しかしそうなった時に、打算的に考えて"正解"を選ばなければならない事態は人生に多くあります。どちらとも言えないのなら、多くの人が"良い"と思う方を選び取る。それを自分の意志で行っていくことが、大人になるということなのだと思います。

斎宮宗不在の中、この場でValkyrieが取るべき最良の選択を。

操り人形から選定者に成り代わり、影片みかは苦渋の決断を果たします。それが今後のValkryieのためになると信じて。

聖夜に見た夢

レオたちの手引きで合流を果たした斎宮は、聖夜に訪れた奇跡を目の当たりにします。

もう決して見られぬはずだった光景。在りし日の3人でステージに立ち、大衆に向かってパフォーマンスを披露する。そんな思い描いた幻想その物が体現されています。

仁兎は自分のことを怨んでいると思っていた。そう瀬名に漏らした斎宮にとって、仁兎がValkyrieを助けに来るという発想は微塵も持ち得ないものだったのでしょう。

そしてそう思っているということは、斎宮もまた過去を省みて自分の行いを恥じているということ。自分に良くないところがあって、そのせいで仁兎を怒らせて今の形がある。そこに思いを馳せるだけの思考を、彼もまた巡らせていたのです。

そこまで分かっているのに関わらず、「だから仁兎は自分を怨んでいる」と結論付けてしまう辺りが斎宮宗らしい。

一番大変な時にユニットを離れる選択をした裏切者。そう一刀両断する権利もある状況で、あくまで仁兎が「離れて行ってしまった」と解釈してしまう心の弱さと優しさ。それが彼の本質です。

それはそれだけ、斎宮が3人だった頃のValkyrieが好きだった証明。独り善がりで束縛することに執着し、その想いを正しく伝えられなかったことの後悔は、今でも斎宮宗の胸に禍根を残しています。

このスターライトフェスティバルは、そんな彼らに贈られた清算の時間。Knightsから与えられた聖夜のプレゼントです。

彼らはアイドルであり芸術家。ステージ上でしか交わせない気持ちがあり、実現できないやり取りがあります。過去を乗り越えて前に進むには、もう一度3人で気持ちを揃えて立つステージが必要でした。

「……あぁ、子供が夢に見る幸せな空想のような景色だね。夢は夢だ、いつかは覚めてしまう。けれど、今だけは」

失った時間は戻らない。起こったことはやり直せない。
だからこそ人は前を向いて、今ある者を懸命に守って行かなければなりません。

願わくばもう一度昔のようにとは言わない。今の彼らにはそれぞれ歩むべき道があり、果たすべき責任がある。これはそれに向かう過程で、たまたま実現した「あるべきではなかったもの」の範疇に他なりません。

だからこれは夢。
わずかな時間が過ぎ去れば砂のように手から零れ落ちてしまう、そんな儚くも尊い理想の具現。

「ともに歌おう、僕の『Valkyrie』。この斎宮宗の最高傑作、僕の愛したすべて」

Valkyrieの斎宮宗と影片みか、Ra*bitsの仁兎なずな。
別たれた道の先で光を得るために、過去の栄光はここに置いて行く。これはそのために必要な儀式。

しかしその瞬間に放たれた彼らの煌めきは紛れもない本物です。見る者の心に焼きつき、Valkyrieの歴史の1ページとして刻まれるのでしょう。未来永劫忘れ去られることない、クリスマスの奇跡として。

騎士たちのスターライトフェスティバル

ライブと共に1つの仕事を終えたKnightsは、惜しくも前半戦で首位に輝くことはできませんでした。SSを控えるTrickstarの意志と覚悟。その抱えるものの強さに、今回は一歩及ばずと言ったところです。

そうなってもらわなくては困るとは言え、負けは負け。上にはfineなどもいて2番手というわけでもない。その結果に悔しさを滲ませるのが朱桜司でした。

ですが彼も不満を漏らし、駄々をこねるだけの子供ではもうありません。今の自分たちが全力を尽くしても勝てなかった。その現状を受け入れて言い訳せず、より闘志を燃やして前に進む意志を得ていたのです。その姿に、どことなくリーダーも嬉しそうにしています。

「はい、あなたの『Knights』で、いいえ私たちの『Knights』で……。今宵も華麗に、永遠に語り継がれるべき伝説を紡ぎあげましょう」

訪れる後半戦は上位ユニットによる全力のパフォーマンス。与えられた時間を目いっぱい使って、彼らの魅力を観客に届ける一夜限りの大舞台が幕を開きます。

過去があるから今がある。それはKnightsにとっても同じこと。Valkyrieのサポートをする中で、Knightsもまた感化されるところがあったに違いないでしょう。

『Merry Christmas! みんな、テキト~に幸せになっちゃって……♪』

彼らはどんなシチュエーションであっても、決して動じない。1つ1つの舞台を着実にこなし、威風堂々と振る舞う。それ故に夢ノ咲の古豪として今なお名声をほしいままにしています。

いつ何時も観客を楽しませることに全力を注げるのは、それだけ数多の経験と戦歴を積み重ねてきた証。身体と心に刻み付けられた傷の数だけ、彼らは目の前の人に幸福を届けられるのです。

『Merry Christmas! 『Knights』のライブへようこそ、お姫さま! 今宵は貴女に使える忠実な騎士たちが、聖夜を麗しく彩ってあげるよぉ♪』

何事もなかったように、初めから成功者として歩んできたのだろうと思われるくらいが丁度良い。そう見せられるほどに研ぎ澄まされた精神がKnightsの根幹には存在しています。

誰もに抱えるものがあって当然。自分たちだけが決して特別というわけではない。故に甘えず奢らず、それでいて息を吸うように輝きを放つ。

それが彼らにしかできないパフォーマンスへと繋がって行くものなのだと思います。

寄り添い合う

鳴上嵐は言いました。

自分のことを「世界でいちばん綺麗だよ、大好きだよって言ってくれたひとが……何の相談もしないまま、夢破れて自殺してしまった」と。

そんな壮絶な過去を何の気無さそうに、しれっと付け加えるように吐露します。その事実を乗り越えて今のように喋れるようになるまでの間に、凄まじい努力があったことは想像に難くありません。

理由も分からず先立ってしまった人の心中を夢想して、自分の心との折り合いをつける。決して得られない解答を自ら生み出さなければならない苦痛は、残された者の心を支配して闇へと落とします。

言おうと思えば言える。けれど、言わなくても良いなら言いたくない。そう感じさせる嵐の態度からは、今も癒え切っていない心の傷を感じさせます。もう割り切っていると言いながら、まだまだ彼の心を苛む大きな穴なのは間違いないでしょう。

そんな失意に暮れる中、もしくは乗り越えて前を見た先で、嵐が見出した居場所がきっと「今のKnights」だったのだと思います。

嵐はボロボロになったKnightsを立て直そうとする中で、図らずとも自分の願望を反映させてしまったのでしょう。

誰も傷つかない、争わない、絶望しない世界。せめて自分の周りだけは穏やかなであってほしいと望んだ嵐は、でき得る限りメンバーたちを争い事から遠ざけて「今のKnights」への道筋を生み出しました。

そこで手に入れた仲間たちの温もりは、嵐の胸に新しい光をもたらします。自分の心に寄り添ってくれる今のKnightsは、彼にとってもう掛け替えのない存在です。だからこそ、その光に照らされる形で、新たな闇の存在にも気付くのです。

「あのひとには、寄り添ってくれる人はいなかったのね」

あの時何もできなかった自分への後悔。それが新たな憂いとなって彼の心に引っ掛かりを残します。

けれど嵐もまた、仲間と共に成長している。それは紛れもない事実であり、真実です。ただ打ちひしがれていた頃の鳴上嵐はもうおらず、その哀愁は今の仲間たちへの決意に変わって彼の道標となり代わります。

「……だからせめて、アタシはもう二度と同じ過ちは繰り返さない。『Knights』のみんなの、そばにいるわ」

どれだけ悔やんでも過去を変えることはできず、嫌が応にも人は未来を見るしかありません。

だから、失われた過去を糧に今を大切にするのは決して薄情なことではない。それが今を生きる彼らにできる、無念に散った者への手向けに他ならないからです。

王として 騎士として

「そっか。じゃあいいよ、誓いを破ったら打ち首だからな。苦しくなったら相談しろよ~、そんぐらいの甲斐性は身につけてやるからさ」

その決意を知った上で、月永レオは改めてKnightsの王で在ろうとその覚悟を口にします。

「意地でもな、おまえらの『王さま』として相応しい風格を得てやるよ」

今のKnightsはもう、彼が治めていた頃のKnightsではない。それでも過去から繋がって今を生きる騎士たちは、自分をまだ"王"だと言ってくれた。Knightsには自分が必要だと、身勝手な自分を求めてくれた。

「ひび割れだらけでも見苦しくても、俺はそんな己を肯定するよ」

そんな彼らに報いるために、王は再び剣を取り立ち上がりました。

大事なのは自分がどう思っているかよりも、周りがどう思ってくれているか。それを考えずに自分を卑下して逃げ出すことを、月永レオはもう選ぼうとしません。

「感謝して奉仕する、ほんとにうれしかったから。王として君臨し、騎士として仕えよう」

自分はKnightsの王。ユニットのリーダー。でもそれ以前に、皆と同じ場所に集う高貴なる騎士の1人。

求めては求められる、そんな横並びで戦う信頼できる仲間たち。与えられた分与え返し、これから往く未来を作る一蓮托生の同胞の姿。

"今"を彼らと共に歩める幸福を噛み締めて、今自分にできることを精一杯に月永レオはこなそうとしています。

「不細工な亀裂だらけの卵でも、そっから生まれる尊いものがあるはずだと信じてるよ」

聖夜にて歌い舞う彼らはとても活き活きとしていて。全員がこの時この瞬間を待ち望んでいたかのごとく、笑顔で最高のパフォーマンスを披露してくれました。

勝ち負けの先にあるものを知る彼らだけの輝き。体現された「騎士たちのスターライトフェスティバル」は、見る者を煌々と魅了し続けています。この場に集う全ての人の未来を、明るく照らし出すかのように。

「Merry Christmas」

おわりに

久々に10,000字超えの記事ですね。
そう言えばアニメの「スタフェス」は2万字くらい書いたんだった気がします。おかしい人じゃん。

このレベルのストーリーですと、キーポイントを紐解くだけでもうこんな感じになってしまうんですよね。「今回活躍したキャラクター達」のような項を用意して、細かいところに触れることが難しくなってきます。

個人的にも歯痒さはありますが、できる限りそのストーリーのエモポイントを重点的に記事化したいと思っています。キャラのことも通り一遍は理解できる程度には読み進めてきましたので、今後はより物語に寄り添った記事も増えると思います。ご理解頂けば幸いです。

2016年最後のイベントストーリー(※日日日先生執筆)ということで、書くと決めた部分については一切の妥協なく書き込みました。残す2つは「スカウト!」記事ですので、もう少しマイルドかな。かな?

2020年中に書けるのはあと2記事。それと共に『あんスタ』の2016年も終了です。

ダブル年明けからは大物がまた続く印象。何事も継続するのが一番難しいですし、やりすぎで燃え尽きないように調整しながら頑張ります。

今回もお読み頂きありがとうございました。それではまた。

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はつ

『超感想エンタミア』運営者。男性。美少女よりイケメンを好み、最近は主に女性向け作品の感想執筆を行っている。キャラの心情読解を得意とし、1人1人に公平に寄り添った感想で人気を博す。その熱量は初見やアニメオリジナル作品においても発揮され、某アニメでは監督から感謝のツイートを受け取ったことも。

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