あんさんぶるスターズ!

キンプリオタクの『あんスタ』ミリしら感想 アプリ編㊾「軌跡☆電撃戦のオータムライブ」

引用元:『あんさんぶるスターズ!!Basic』「軌跡☆電撃戦のオータムライブ」

今回は「メインストーリー 二部」キセキシリーズ第2弾。「軌跡☆電撃戦のオータムライブ」です。

アニメでも「オータムライブ」として2話を使って映像化されたストーリーで、衣更真緒のパーソナリティの深掘りが非常に印象的な物語でした。

またAdamのお披露目ストでもあり、TrickstarとAdamそれぞれのライブ演出が1つの話の中で取り上げたことなども特徴的。アニメで見たストーリーの中でも特に面白く見られたものの1つです。

そんな「オータムライブ」を再び原作で追想すること2年ぶり。色々見えるものも変わっているはずです。原作とアニメの差などを気に留めながら、改めて語って行くことと致しましょう。

よろしければお付き合いくださいませ。

"個"を受け入れる新たなTrickstar

まず最初にオータムライブはアニメでかなりの文量が書きこまれていますので、詳細な解釈についてはアニメの記事の方もご覧ください。

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今見ると「何様だこいつ」と思える部分も多々ありますが、概ねは間違ったことは言っていないところが多くてホッとしています。アニメも後半戦に入っていたこともあり、よく書けてますね(謎自画自賛)前半戦の記事と見比べると、アニメ『あんスタ』の感想記事執筆中に、執筆スタイルが確立されたことがよく分かります。

その中でアニメと原作で一部異なった印象を受けたところから始めると、やはりコズプロの魅力に傾きかけたTrickstarの在り方でしょうか。

アニメ視聴当時では「メインストーリー 一部」の英智の策略同様に揺らいだが、実はそれは「あえて罠にハマッた振りをしていた」だけだったと、最終的に僕は解釈していました。

しかし原作を見ると、それは1つの真ではあるものの「各々がコズプロに魅力を感じていたこともまた真である」と取れるようなやり取りが交わされていたと感じました。

Trickstarの4人がそれぞれの視点から移籍の可能性やメリットを捉え、それが意義のある選択肢かどうかを見極めています。そしてストーリー中では、その発想自体が間違いであったと言及されたシーンはなかったと思います。

以前の彼らであれば、それを放置したままでいることを許さなかったような気がします。Trickstarを崩壊させかねない考えを持つ者がいれば、説得してでも今の4人でい続ける思いを共有しようとしたはずです。

誰かにそれを強制するとか嫌々従わせるとかではなく、行動することで全員が自主的に同じ方向を向くことができるのがTrickstarというユニットでした。「一部」ではその実行力のおかげで、一度はユニットを抜けることを選んだ北斗を取り戻すことができています。

それがTrickstarの強さであったのは間違いないものの、「サマーライブ」では逆にその団結力を利用されて忸怩たる敗北を喫しました。その後の彼らが辿り着いたストーリーがこの「オータムライブ」です。

「オータムライブ」の彼らは"個"として様々なことを考え、動き、それが最終的に結びついてAdamに一杯食わせることに成功しました。その流れそのものはアニメでも感じ取れたことでした。

"個"を尊重した上で"全"になれたからこそ、彼らは限界をBREAKTHROUGHできました。

過去の敗北を糧にした、「各個行動の合一化」。
これがTrickstarが新たに身に着けた、自分たちを高速で成長させる方法だと思っています。

そしてその"個"の中には、どうやら移籍絡みの内容も含まれたままです。ここから彼らは行動だけではなく、価値観や精神性の違いなども容認して抱き込めるようになったと解釈できます。

元々全く人間のタイプが違う4人故に、彼らはTrickstarであることについては常に同じ価値観を共有していた印象でした。それが今回になって、そこの齟齬さえも一旦置いておくことができるようになりました。

それぞれのTrickstarへの想いが異なっていたとしても、皆が「Trickstarが想っている」ことは変わらない。故に自分たちは4人とあんずでTrickstarなんだ。

何か致命的な出来事があって相容れない差が生まれたとしたって、自分たちがTrickstarであることは絶対に変わらない。そう言いたげな堂々たる振る舞いを魅せてくれました。

今回直面した多くの困難と交流の中で、彼らが感じさせてくれたのはそんな屈託のない自信だったと思います。

何が起きたって、どんな差が生まれたって、Trickstarが壊れることは絶対にない。彼らがステージの上で一堂に会す限り、その輝きは失われることはない。

「一部」での解散危機に近しい状況が再現されながらも、そこにいるTrickstarが見せてくれたもの。それは当時とは全く異なった結末、そして彼らへの信頼感と安心感なのでした。

Adam

今回初登場となったEdenの半身 Adamの2人。
いよいよ原作軸で七種茨と乱凪砂の話をする機会がやってきました。

とりあえず原作の「オータムライブ」においても、概ねはアニメで感じ取ったのに近い印象だったと思います。

ただ凪砂については、このストーリーに詰め込まれた個人情報が多すぎる上に、1人だけ今までのキャラクターと世界観が違いすぎると言って良い存在。原作軸で考えると1ストーリー辺りで読み手に与えるインパクトは、恐らく他のキャラの比ではありません。

基本的に『あんスタ』は「キャラの表面的な魅力が語られる回」「キャラの内面がしっかりと語られる回」「キャラのバックボーンが語られる回」などが個別に用意されているため、キャラ個人個人の理解度は年単位で緩やかに深まっていくことがほとんどです。

その点で言うと凪砂は、これらが1つのストーリーに大まかにまとまっていて且つその内容が珍妙すぎる生粋の問題児。しかも彼自身のキャラの癖が強すぎる、台詞回しが独特すぎて何を言っているのか分からないなど情報の密度がBREAKTHROUGH(うるせぇ馬鹿)しています。

アニメで彼のことを見ていなければ、間違いなく「なんかとんでもねぇのが出てきたな…」という印象になっていたことでしょう。直前に出てくる茨の癖の強さなんて、閣下のそれに比べれば"平常"の範囲に過ぎません。

さて、その中でアニメと原作で感じ取ったものの違いを語って行きましょう。

七種茨

アニメでは理知的にTrickstarを追い詰めていく描写が目立っており、どちらかと言わずとも「有能な少年である」という印象に落ち着いていたと思います。上手く行かなかったのはTrickstarの成長値を単に見誤ったに過ぎない、と解釈していました。

原作でも"有能"という印象はあるのですが、その中で「計画が失敗したのは彼自身の落ち度によるものでは?」という見方も強まりました。何と言うかちょっと天然っぽい。抜けてるところがある。こいつ意外と可愛いところがあるのかもしれない。そう思わされた「オータムライブ」でした。

またアニメより圧倒的に台詞量が多いこともあり、Trickstarをよいしょする台詞のバリエーションも多岐にわたりました。

よくここまで人のことを"良く"言えるもんだと関心しっ放しだったものの、あまりにも全肯定の仕方がオーバーなため「本当に褒める気があるのか?」と思えてきてしまう始末。

あれだけ目の前で露骨に上げられると100%の人が「怪しい」と感じると思うのですが、本人にその自覚があるのかが大変気がかりです。

もちろん文面だけでは伝わらない所作などからそれらを成立させている可能性は十分にあり、それを含めて"有能"であると取っても何らおかしくありません。ただ、結果としてこのよいしょ含めて作戦が失敗していることを思うと…うーん何とも、と言ったところです。

これは決して悪いところではなく、彼からより強い人間味を感じることができてとても好印象でした。

本人は完璧にやっているつもりだが上手く行かないネタキャラというのはよくいますが、茨は今のところ失敗しても動揺したり混乱したりする素振りがありません。

成功したところは成功と部分的に抜き出し、失敗は即座に受け入れて次の展開へと移る。いじられキャラではなく、あくまで"有能"であるという一面が強調されているように感じます。

けれどそのストイックさがあるのに上手く行かないからこそ、何となく可愛らしいと感じてしまったりとか、「頑張れよ」と声をかけてあげたくなると言うか。そういう不思議な魅力があるキャラクターだなと今回思いました。

憎まれポジではあるものの、憎まれキャラではない。Edenはそのバランスの上に立つユニットだと思っていますが、やはり七種茨もその一員であるということなのだと感じることができました。

乱凪砂

アニメでは普段はダーク不思議ちゃん、ステージに立てばオールハイル閣下。そんな二面性(?)のあるキャラという部分が強調されていました。

当時から衣更真緒に対する発言について「悪気はないのでは?」と感じていましたが、原作ではその辺りがクリアになってより分かりやすい印象でした(※悪気がないから良いという話ではない)茨…性格が悪すぎる(直球)

また癖の強い日日日台詞がマイルド化されているアニスタにおいて、意外とそのまま引用された台詞が多いというのも特徴的。アニメスタッフが「そうするべき(そうせざるを得ない)」とした数少ないキャラであり、それだけ凪砂の特異性が際立つポイントでもあると思います。

原作ではそういった人間性が台詞で拾われている他、根暗な台詞の数もかなり多いことで、全体的にアニメより人間味を感じられるキャラであると感じました。

変な人であるけれど、"人"ではある。
そういうバランスでキャラの描写が練られていて、浮世離れした超人であるというイメージはあまり抱きませんでした。

この辺りは『あんスタ』において、共通した語り口なようにも思います。奇人に近しいオーラがある人物というのにも非常に高い納得感があります。

少なくともこの「オータムライブ」を読んだことで、「ちゃんと話せば意外と会話が成立する人なのだろう」と思うことができました。

そもそも根源的に争いを毛嫌いする人間であり、人を貶めたり煽ったりして戦意を逆立てるようなことは彼の信念と逆行する行為です。それであの発言が出てしまうのは本当にどうしようもないものの、その実、態度にも発言にも特に裏表がありません。

恐らく発言を整理すると彼の真に言いたいことはしっかりと見えてくるというタイプなので、何度か顔を突き合わせて会話すると初対面の印象が崩れていく。そういう面白さがありそうな人だなぁと感じました。

基本的に乱凪砂は「幸せな終わりを迎えるために人はどう生きるべきか」という考え方をしているように見えていて(憶測)、真緒や他の3人にも今取るべき最善手を示したに過ぎないでしょう。

最終的には彼らの選択や挑戦を肯定的に捉えていて、真緒が共にいる・真緒と共にいることに否定的な弁を向けることもありません。その事情を4人が知らないのは仕方がないことですが、こちらには既に幾何か凪砂の善良性が伝わってきています。

これから凪砂が直接的な対決を介さない形で、Trickstar…ひいては他の夢ノ咲のアイドルと会話するシーンが見られるのが楽しみです。全く想像できない面白い一面も見せてくれるような、そんな気がしているので。

衣更真緒 人生の煌めき

凪砂に懐中電灯呼ばわりされ、今まで自分が目を背けていた"図星"を目の前に突き付けられた。その衣更真緒こそがこの「オータムライブ」のキーマンです。

アニメでも非常に印象的な展開と演出で盛り上げてくれた彼の物語は、原作では更なる深みを感じさせてくれました。前述した「何が起きてもTrickstarは4人でTrickstarのままでい続ける」確信。それをストーリー中で明確に示してくれたのが、この衣更真緒だと思えたからです。

スタッフとライターが激務に狂ったのか何故か衣更が急にあんずちゃんに特大ラッキースケベをかまし、凛月との電話がネタ的に消費されたことは大目に見ます(アニメで強く印象に残っていた電話のシーンがまさか存在しないとはこれ如何に)

真面目に話すと「オータムライブ」はやたらと"少年漫画"という言葉がフィーチャーされているので、恐らくあれは少年漫画の"お約束"として入れられたのだとは思います。あれはあれでそのままアニメで見たかった気もする。

そんなこんなを経て、終盤戦でどん底のメンタルから這い上がった衣更真緒の顔は晴れやかでした。

ずっと気になっていたこと・気にしていたことと向き合わざるを得なくなる。その状況を最低最悪の形で体現されたことが、逆に真緒にとっては最も良い刺激となりました。

この「オータムライブ」での経験が無ければ、きっと真緒はこれらをなあなあにしたまま、ずっと中途半端な状態で燻ることになっていたのでしょう。そうであったなら、英智も彼を次期生徒会長に指名することはなかったのではないかと思います。

即座に逃げ出したくなる逆境を目の前にした時にこそ、人の真価が問われます。そして天性から世渡り上手である真緒は、そういった状況を上手く避け続けて生きて来れてしまったのではないでしょうか。

だからこれは彼にとって初めての経験。初めての挑戦です。
それに直面した先で衣更真緒を待っていたのは、純粋な「やりたい」という気持ちそのものでした。

「もう、そんな俺でいたくない。おまえらと一緒に戦って、天辺をとって、勝ち誇って笑いたい」

誰かに否定されたから、やめた方が良いから。そう言われて引き下がっていれば、少なくともそれ以上傷付くことはない。そして誰かを傷付けることもない。

「どうだ、俺は……俺たちはすごいだろうって」

でもそれを続けている限り、何かを掴めることもない。だから人は挑み続けるのです。

辛くても悲しくても、その先にある"何か"を掴むために人は動かずにはいられません。

「『Trickstar』はすごいだろうって! 全力で誇って、すごいねって褒めてもらいたいよ!」

その領域に衣更真緒を至らせたものこそ、Trickstarという掛け替えのない存在でした。

彼らと共に在りたい、彼らと共に輝きたい。
その想いは、ずっと損得勘定を中心に動き続けていた真緒の心は確かに大きく動かしました。

「正解じゃなくてもいい、これまで避けてたことをやってみる!」

変に大人ぶらず、自分を抑え込まず、歳相応の少年として。初めて真緒は自分の欲求に正直に従います。彼らと同じ夢を見て、彼らと同じ光を掴む。その在り方を選んだ以上、もうそこに限界点はありません。

「そう決めたらさぁ、すっごい楽しくなってきたんだよ!」

できるかできないかは問題ではありません。やるかやらないか。それに正直に従った時、人は人生における最も大きな充実感を掴みます。

それは必ずしも成功に繋がる選択ではないのかもしれません。一歩踏み外せば真っ逆さまに奈落に落ちていくかもしれない。そんなハイリスクハイリターンな選択です。

無難な方を取り続けていれば、少なくとも不幸な人生を歩む確率は著しく低くなります。多くの人はそれを指して、正しい選択だと言うはずです。

「あはは! 今すぐ歌って踊りたいよ、まだ【オータムライブ】は始まらないのか?」

けれどそれは、必ずしも「幸福であること」とイコールではないのです。他人から見た"良い人生"が、自分にとって"幸福な人生"とは限りません。そして、その逆も然りです。

自分だけの幸せは、自分の意思で選んだ先にしか存在しない。如何に馬鹿だ愚かだと罵られようとも、本人がその瞬間に人生の煌めきを感じ取ることができるなら。それはその人物にとっては何よりも尊い行動になり得ます。

引用元:『あんさんぶるスターズ!!Basic』「軌跡☆電撃戦のオータムライブ」

であるならば、今の衣更真緒の選択を誰が否定することができましょうか。

迷いを払い、新たな自分を掴み取り。その先で今までにないほど明るく、楽しそうに自分のことを語る真緒を見て。その決断を過ちだと言える人が果たして存在し得るのでしょうか。

当然その幸せと充実感を維持するのは、並半端なことではありません。歩みを止め、動くことを放棄すれば。その時は誰よりも"不幸"な結末が待っています。自己本位で身勝手に燃え尽きた灰を見て、それに慈悲をかけようと思う人もまた存在しないのです。

ですがきっと衣更真緒はそうはなりません。

極めて非凡な才能を持つ掛け替えのない仲間が、彼と共に歩いてくれるからです。そしてその3人の仲間たちに、彼自身もまた必要される存在だからです。

味わっていた孤独・疎外感は今日この場に打ち捨てて。自分の限界を打ち破った衣更真緒はステージに上がります。

引用元:『あんさんぶるスターズ!!Basic』「軌跡☆電撃戦のオータムライブ」

今はまだ届かない牙城。その中心を打ち崩す戦いは、この日この場所、衣更真緒の放つ輝きと共に始まりました。

より細かい点への言及は、
初見生放送のアーカイブをどうぞ!

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はつ

『超感想エンタミア』運営者。男性。美少女よりイケメンを好み、最近は主に女性向け作品の感想執筆を行っている。キャラの心情読解を得意とし、1人1人に公平に寄り添った感想で人気を博す。その熱量は初見やアニメオリジナル作品においても発揮され、某アニメでは監督から感謝のツイートを受け取ったことも。

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