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【ミリしら超感想】『アイナナ Second』第11話 躍進を挫く影 「守りたい場所」のために

2020年12月6日

新たなる障害

ファンと歴史に残る一体感を生み出したアイナナたち。

さぁこのまま一気に階段を駆け上がれ…と言いたいところ、間髪入れずに新しい試練が襲いかかりました(もう少し余韻に浸らせてくれても良いではないか…………)

ナギがサクラハルキ本人から預かった楽曲を使用していることで、昨今の「ゼロ」を取り巻く事件に巻き込まれてしまったのです。落書きには「Haruki the Betrayer!」と書かれ、ゼロがハルキに怒りを向けているような表現が追加されています。

アイナナは同じ作曲家の楽曲を使用しているだけで、それら自体は全て未発表のものなはずです。冷静に考えればアイナナと小鳥遊プロダクションに非はないはずなのですが、記述に世論が踊らされるほどに落書きが注目を集めているということのようです。

ワイドショーはホットな話題に紐付いたネタさえ見つかれば何でも良いコンテンツなので置いておくとして、落書きを書いている者がアイナナの曲はハルキのものだと断定できていることが気がかりです。

事実とは言えその事情を知っている者は本当に極わずかしかおらず、結果として落書きがゼロ本人である新たな裏付けになってしまっています。こうなると、余計に手が付けられない状況に入って行くと言わざるを得ません。

元々大きな事務所ではない小鳥遊プロはマスコミには決して強くなく、食い物にされやすい立場。ここまでアイドルたちの大きなスキャンダルもなかったこともあり(それ自体は良いことだが)、ゴシップメディアへの対応が全く身についていないのも逆風になりました。

しかしながら、一個人どころかグループの問題でさえなく、いきなり事務所単位で"世間"に巻き込まれてしまうなど不運という他ありません。スタッフがてんやわんやになるのも致し方ないとするのが妥当でしょう。万理さん、お気を確かに…。

何も悪いことをしていなくとも…

今回の問題は、小鳥遊プロ側が解決する方法をこの時点で持ち合わせていないというのも厄介です。

彼らは純然たる被害者であり、何もやましいことはしていません。ただ「サクラハルキの曲を使用している」ということが事実であるだけです。

にも関わらず、それを公表することで彼らは曲を失ってしまう状況に置かれてしまっているのです。そしてそれは当然、今までのアイナナの実質的な活動停止を意味します。

悪質なデマであれば否定すれば済む話でしたが、なまじ真実故にタチが悪い。そうなると彼らは最善手を模索しなければならず、必然的に何も言えない・公表できない期間が続きます。

その間にも、世間はアイナナたちについて憶測を交わし合い続けるでしょう。短絡的に分かっている点と点を結び付け、勝手に彼らを悪者にしてしまいます。結果としてだんまりを続ければ続けるほどに、世間の心象は悪化して行く。重ねて確認しますが、ここまで何も悪いことをしていないのにも関わらず、です。

マスコミの偏向報道とそれに踊らされる大衆(※恐らくさしてアイナナに関心自体がない)が、安易に「ハルキの曲を使わない方が良いのでは」と思い始めている。それだけで彼らはアイドル生命を絶たれかねない窮地に追い込まれてしまいました。この事態は見た目よりも、ずっと深刻なものだと思います。

つくづく芸能界というのは"世論"の上に成り立っており、アイドルたちはそれに翻弄されることから逃れられないと思わされます。

せっかく自分に自信を取り戻し始めたのに、活動と本当に無関係なところでその出鼻を挫かれる。アイナナの7人があまりにも不憫でなりません。

良いことがあった時、それに反応するように悪いことが襲いかかってくるという世の理不尽。

『アイナナ』の物語はその点をかなり徹底して描いており、本当に地獄極まりないなと改めて感じさせられます。彼らが真の幸せを掴む瞬間を見るのは、もう少し先になりそうです。

すれ違うMEZZO"

先週から引きずる逢坂壮五の受難は、今週になっても解消されないまま。未だ環に理の話をするべきかを悩み続けているようです。

悩むのは良いのですが、本人を目の前にして態度に出すぎなのはやはり良くない。あれではもう「言っている」のと同じと言っても過言ではありません。少なくとも隠すという選択肢がまだ存在しているのなら、環に隠し事を匂わせてしまうのは失敗でしょう。

壮五自身は、目の前に障害が生まれるとそれに向かって一直線になってしまうタイプ。自分が分かりやすい態度を取っていること自体に、あまり自覚がないのかもしれないなと感じました。

その後に陸とやり取りした例え話においても、「内容が凝りすぎて下手」というかなり珍しい現象を引き起こしています。書き手が陥りがちな状況ではあるので、個人的には親近感が湧かないこともない一幕とも。そう思うと、意外とクリエイター気質なのかもしれませんね(?)

陸を話し相手に選んだ理由は「生き別れの兄弟がいる点が環と近しいから」だと思われますが、それ以外のことを考えるとこの人選はどう考えても悪手

客観的に見れば誰もが分かることです。しかも一織を引き合いに出したりしたら、余計フラットな意見を聞けなくなってしまいます。あえて言おう。陸は悪くない。

このように今回の壮五はとにかく空回りの連続で、相当状況に振り回されているのが分かります。事務所に舞い込んでいるゴシップ騒動に気を配っている余裕さえないようです。

それだけ環のことをしっかりと考えていることにはなるのですが、想えば想うほどに環の心情とはすれ違いが生まれてしまいます。しかも環に異変を気付かれてしまっていることが、余計にその問題を浮き彫りにしていると言えるでしょう。

それは確実に他のメンバーにも伝播し、また無用ないざこざを噴出する火種になってしまうリスクもあります。自分だけでの解決は難しい問題。何とか彼に手を差し伸べてくれる人が、現れると良いのですが。

「役立たずの一織は役に立ちようがないですよ!
もう出番いらないんじゃないですか?☆」

「兄さん…私…メンバーに嫌われているかもしれないです…」

ほらまたいらん軋轢が(※多分真面目に取り合う必要はない)

四葉環の成長

一方の環は壮五の異変を「彼自身の不幸」だと解釈して、壮五に心配を向けているようでした。いやー成長したな環。お兄さん嬉しいよ。だからこそ胸が痛むのだが。

自分のことを想ってくれているそーちゃんの力になりたい。そう考えられるようになった彼は、自分と壮五の仲を繋いでくれた立役者 大和に相談しに行きます。

「ヤマさんが言ってたのもあれ嘘だろ?」

環!!!!お兄さん嬉しい!!!!

7話くらいから個人的にずーっと引きずっていた大和の嘘。これについては、何とか最良の形で着地してくれました。

この感想記事を通して読んでくれている方々は「そこはそんなに心配しなくて良いけどw」と思われていたことでしょう。僕は本気で心配していました。リアルに「おぉ!?」と声が出た。心から胸をなで下ろしています。

しかし悲しいかな、それで全てが解決するわけではないところまで2人の問題は変容してしまったのが現在です。環が大和の嘘に気付けたのも壮五の異変があってこそのことだと思うと、手放しに喜べないのもまた事実です。

迷走する壮五のことを逆に環が慮れるようになったのは、100%素晴らしい変化に間違いありません。でもその変化故に、環もまた"悩む側"に身を置く結果を生んでしまっていると言えます。

確実に良い方向に進んでいるからこそ、2人が別々の悩みを抱える状況も生まれる。そのせいで、また2人の距離が拡がってしまうリスクさえも表出してくる。ここもまた良きがあれば悪きも顔を出すが貫かれています。

特に環は今までの自分の素行と発言の悪さのせいで、壮五に信頼されていないのではないかと憂慮しています。

こういう不安は気にし出すとなかなか払拭できないもの。完全な解決には、今までにない交流が別途必要になるでしょう。時間はかかると思いますが、着実に前進はしているという事実を、ここではポジティブに見てあげたいです。

自分への不安と後悔

「タマ。お前は優しい良い奴だ」

大和の言う通り、環は根は非常に優しくて仲間想いの青年です。今までは気にならなかった部分が多かっただけで、気にし出せばそれだけ色々な感情を整理して抱えられるようにもなるのでしょう。

「俺もソウも皆も、お前のそういうとこ、大好きだぞ」

今の事情は奇しくも四葉環の良いところ、今後への期待を感じさせてくれるシーンを創り上げていて。キャラの成長が好ましくない形で感じ取れてしまうという、我々にとっては感情の向けどころが非常に難しい展開が目の前で体現されていたと思います。

「ソウは独りで抱え込むタイプなんだ。
準備ができたら話してくれるよ。お前に一番に」

大和もまた環の変化を感じ取ってか、優しく励ますように彼に語りかけました。

「どうかな…」

今のところ大和の見立てはほぼ外れることはなく、結果的に良い方向に転ぶアドバイスを提示し続けています。それだけ大和が仲間のことを本当によく観察して理解しているということでしょう。今回も彼の言った通りに話が進むことを願って止みません。

「――待ってても良いのかな…」

そんな大和の言葉を聞いても、完全には今の状況を肯定できない環の姿を見ることもできました。以前の彼の振る舞いから考えればまるで別人のようです。

今の彼が抱えるものは壮五が言ってくれないことへの不満ではなく、きっと壮五に"言ってもらえない"ことへの不安。そうさせてしまったかもしれない、自分への後悔なのではないでしょうか。

「信じて、待ってても…」

壮五も環も、相手を信頼していないわけでは決してない。ただ積み上げてきたものはなくならず、過去の失態は望まぬ形で彼らの心を締め付けます。

それでも今回確かな成長を見せてくれた環なら、この2人の不安を解消する結末を描けるはずです。彼が2人分の不安を抱き込んで、清濁併せ呑んだ関係性を導く未来。その光明は見え始めています。

今まで僕が書き進めてきたMEZZO"への不安も、今までの四葉環ありきのものでした。けれどその話は、もう今回から無しにしましょう。

新しく成長した四葉環は、この11話でハッキリとその想いを我々に届けてくれた。それは間違いないことだからです。

新たな始まりへ向かって苦悩するMEZZO"の物語。
この『Second BEAT!』のクライマックスに向けてどこまで描かれるか。期待して行く末を見届けようと思います。

おわりに

第11話は終盤戦に向けて必要な情報を詰め込んだ、大きな転換点となる一話だったという印象。

情報過多の作品は今までに幾つも見てきたと思いますが、全ての話が直前の何かと地続きになっているこのストーリー性は『アイドリッシュセブン』の特に尖った部分だなと改めて思いました。

ここまで鬱屈し続けてきたアイナナが、苦難から一歩抜け出すライブシーンは最重要ポイント。それを1エピソードの中盤に置くというのは普通ならあり得ませんが、『アイナナ』の語り口だと今回の構成がベストと判断されたのも納得できます。

彼らにとっての大きなライブも、社会を描く1つの長い物語の中では通過点に過ぎない。

そんな不条理さを感じさせてくれるようでした。

結果としてこの記事でもライブ内容に触れることができませんでしたが、あのシーンは見て感じるのが一番だと率直に思いました。感想として文章に起こすべきところを考えた結果…と思って頂ければ幸いです。

さて次回からはまた1つ大きな展開がありそうです。正直ED後のナギの姿は涙が出るほどカッコ良く興奮したので、早く彼についての感想が書いてみたいという思いでいっぱいです。

諸々の都合で今回のラストシーン踏まえて、次回記事にて執筆しようと思っています。気になる方は、是非次回も読みにきてくださいね。それではまた。

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はつ

『超感想エンタミア』運営者。男性。美少女よりイケメンを好み、最近は主に女性向け作品の感想執筆を行っている。キャラの心情読解を得意とし、1人1人に公平に寄り添った感想で人気を博す。その熱量は初見やアニメオリジナル作品においても発揮され、某アニメでは監督から感謝のツイートを受け取ったことも。

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