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【ミリしら超感想】『アイナナ Second』第14話 伝説への挑戦状 重い「引き金」をひいた先へ

2020年12月26日

 

引用元:https://idolish7.com/aninana/story/second/?p=1375

MEZZO"に生まれた1つの不和から、大きく動き出した『アイドリッシュセブン』の物語。

色々と勘違いした逢坂壮五の暴走による珍騒動は、"結果的に"良い方向へ。

大胆な(リスキーな)行動なくしては絶対に描けなかったショートカットを作り出し、見事に最も必要な未来の実現に成功しました。やはり持つべきものは権力ですね、はい。

遂に出会うことができた四葉環とその妹の理。彼らが繋がることで見えてくるたくさんの関係と事実があります。

そんな激動の展開に寄り添って行く第14話を、今回もしっかりと紐解いて参りましょう。

四葉環と九条理

四葉環は妹に会うためにアイドルになった。それは誰もが知っている周知の事実です。

故にこの光景は誰もが願った1つの理想で、果たされなければならなかった未来その物でしょう。

それまでの経過はどうあれ、少なくとも「四葉環はアイドルになったことで妹を探し出せた」ことに違いはありません。有言実行、掲げられていた目的が達成される瞬間は、何度見ても気持ちが良いものです。

壮五がついた「環がキーホルダーで体調を崩した」という嘘が、理にクリーンヒットする内容だったのも僥倖でした。彼女はアイドル活動をしている環を画面越しに見て、安心している節もあったのでしょう。その「兄ちゃんは元気だ」という前提が崩れた時、駆け出さずにはいられない女の子だったようです。

そして壮五が利用した番組がTRIGGERの生放送だったことで、現在の九条家がその場に揃うことになったのもこれまた都合が良い。壮五としては「自分と環のやり取りを知っている相手」として龍之介の助力を仰いだ形でしょうが、それさえも全てを真実へとグッと近付ける選択となりました。

これを「ストーリー進行の都合だ」で片付けてしまうのは簡単ですが、現実もまた「そんな偶然ある?」という1つの出来事で大きく事情が動いてしまうものです。

事実は小説より奇なり。その"偶然"があまりにも物語中に多ければ問題ですが、『アイナナ』はむしろここまで、丹念に"必然"を描いてきた作品。だからこそ、この1回の"偶然"がストーリーを切り裂いて行く感覚が、心地良く我々の心に伝わってきていると思います。

しかし環が元気であることを会って確かめられた理は、環の「一緒に暮らそう」という申し出を一考することさえなく断ってしまいます。彼女にとって優先するべきは「今お世話になっている人」で。その人と一緒にいたいのだと、兄の想いを拒絶したのです。

2人の人生 その違い

幼少期に離れ離れになった環と理には、それぞれに異なった人生が存在しています。それは総合して10年にも満たない時間でしょうが、彼らの年齢では人生の半分以上を占める時間です。

その間にどのような人生を送ってきたかをお互いは知り得ることはなく、今はただ思い出の中の兄と妹が再生されている。そんな状況です。

養護施設で育った環は"家族"という観念の中で育っておらず、そのせいでたった1人の庇護すべき肉親である理のことを求め続けてきました。ですが一方の理は早い段階で養子として他人に迎え入れられ、新しい家族を得ることに。その後、その家族にもほぼ売られる形で九条家の一員となりました。

結果として環と理の間には、別れてから形成されている価値観に決定的な齟齬があります。環にとっての理はたった1人の家族でも、理にとっての環はそうではないとも言えるでしょう。あまりにも虚しく悲しい現実が、そこにはありました。

しかし彼らはまだ、お互いの境遇の差を想像できるほどに成熟した人間ではありません。そもそも環はそういう想像が得意ではないタイプですし、その点は同じ血を引く理も同様と考えて良いと思われます。

互いを想い合っているのに、積み上げてきたものの違いからベストな交流を遂げることができなかった四葉環と九条理。

彼らが本当の気持ちと意志を分かち合える日は来るのでしょうか。このアニメ内でそこまで辿り着くのは難しいと思いますが、いつかその瞬間を見られる日が来てほしい。そう感じています。

九条鷹匡の世界

理の独断行動によって、半ば仕方がなくアイドルたちの前に姿を現すことになった九条鷹匡。その正体はやはり、ゼロのマネージャーという肩書を持つ伝説の関係者でした。

今まで彼は自分を知る者の前には姿を現さず、自分を知らない者には素性を明かさないような立ち回りで交流を重ねていたように思います。基本的には飄々としてとぼけたような態度を取りますが、その実、極めて打算的に言葉を弄している印象です。

全てを理解した上で自分の発言をプロデュースしているようなきらいもあり、今回も「致し方なく話さなければならない」という前提の上で"適切に"振る舞ったに過ぎないのかもしれません。底が見えないままの相変わらずと言ったところです。

例えば陸から話しかけられた時「今の今まで忘れていた」といった態度を取っていますが、実際は彼はアイナナのライブを一度観覧していますし、そのことについて天とやり取りをしているシーンもありました。

ここから相手の感情を翻弄するような発言を意図的に行っている可能性は高いと感じ、その発言には幾何かのフェイクが混ざっているものと判断しています。

その上で「ゼロを超えるアイドルを生み出す」といった基本姿勢など、嘘偽りないはずの感情を言葉に込めているから始末が悪い。どこからどこまでが九条鷹匡の本心であるかは誰にも分からないのが現状です。

前回では彼から最大の寵愛を受ける天でさえ、「自分がゼロを超えるアイドルになった時、本当に喜んでくれるのか」を気にするシーンがありました。このように現在映像として提示されている情報だけで、彼の内面を解釈するのはまだ難しいと思っています。

一応「ゼロは僕を裏切った」という発言から、過去にゼロとの軋轢が存在するのは事実と断定。そうでなければ今の行動との辻褄が全く合わないからです。前回予想で書いておいた内容との大きなズレもありませんが、そもそも彼が犯人なのか自体が(Cパートによって)曖昧となり、一旦保留となっています。

乗り越えるために

今回の九条の出現によって、壮五と環には共通の敵が生まれたことに。これによりMEZZO"は、また2人で行動を共にする理由が生まれました。

九条が与えた影響はそれだけに留まりません。彼は陸にとっても「肉親を奪い取った憎らしい相手」であり、その理想はトップアイドルを目指すIDOLiSH7にとっても看過できないものでした。さらにRe:valeの百を不要に傷付け、その絆に解れを齎そうとまでしています。

九条はどこまでも身勝手で、どこまでも自身の理想に実直な男性です。その態度と振る舞いからは、決してアイドルたちが受け入れてはいけない妄執が放たれています。ただその上で押さえておかなければならないことが、1つだけ存在しています。

それは3組のアイドルたちがこの場に集い交流を深めているのは、全て九条鷹匡の行動があってこそ実現したものであるということです。

そもそも天が七瀬家から引き取られることがなければ、TRIGGERは生まれませんでした。Re:valeは九条に目をつけられなければ、元相方と2人のまま活動を続けていたかもしれません。

天が九条天になっていなかったとしたら、身体の弱い陸がアイドルになることはあったでしょうか。そして陸がいなかったとしたら、少なくとも今のIDOLiSH7は存在していないでしょう。

現状についても、環は理との会話のみでは壮五への疑心を晴らせなかった可能性もあります。皮肉なものですが、MEZZO"は九条の出現と言葉によって活動休止危機を乗り越えたことになってしまっています。さらに言うなら、九条が理を見初めていなければ、この再会自体が為されていないはずです。

このように元を辿って行くと、今のアイドルたちは全て九条鷹匡が乱した世界の上で成立している存在です。彼はアイナナとRe:valeにとって間違いなく仇敵と言える人間ですが、彼がそうならなければ2組のアイドルが今の状態でステージに立つこともありませんでした。

「――ゼロを作りたい、ゼロを超えたいっていうあいつの夢は、周りの人間をバラバラにするんだ」

ですから陸のこの台詞。これは表面的に見れば事実ですが、根源的なところでは誤りなのです。九条がバラバラにしたものの先で、より強く紡がれた絆が存在してしまっているのですから。

陸の決意と意志の強さを感じさせる一連の台詞は、彼の純粋でまっすぐな気持ちを印象付けるとても良いシーンだったには違いなく。だからこそ、その裏にある真実をも想起させる内容であったと僕は感じています。

九条鷹匡に立ち向かっていける掛け替えのない絆は、確かに今彼らの胸中で堅く結ばれています。しかし自分たちの絆は、九条なしではあり得ないものだった。その直視し難い現実を、彼らは飲み込んで行かなければならないのでしょう。

何故なら九条鷹匡という男が、そういった現実まで内包した上で「自身の理想を遂げるための道」を見据えている存在に見えているからです。それを超えていこうと言うのなら、それを上回るだけの信念と輝きがどうしても必要となります。

理解し噛み砕き、徐々に受け入れるだけが全てではありません。より大きな光となって、その事実ごと全てを一飲みにするのも1つの方法論でしょう。

そういった複数ある選択肢の中、彼らが彼らだからこそできるやり方で、九条の生み出した世界から解脱していく。その生き様が見られることを楽しみに待っていようと思います。

"友達"

件の問題から1つ距離を置いたところにいる存在。それがTRIGGERです。

2期においてはまたも彼らは特別枠。当事者の九条天を抱えているとは言え、今回の一件のせいで彼が変化するわけでもないはずです。彼らにとって実質1つの面倒事程度であり、物理的なダメージはほぼないに等しいと言えるでしょう。

ですが精神的な面では決してそうではありません。九条という家の事情が明るみになったことで、「九条天がどう思っているのか」は彼らにとって確認しなければならない"問題"となりました。

「TRIGGGER…俺たちのことをどう思ってるんだ?」

九条鷹匡の理想を叶えるため、ゼロを超えるアイドルになる。天にとってTRIGGERがそのための踏み台であるのなら、今後の彼らの付き合いは全く違うものになって行くでしょう。

以前に確認し合ったこととは言え、知らなかった(隠していた)事実を踏まえれば話が変わる可能性はあります。天にとってはわざわざ言う必要のないことでも、楽と龍之介にとっては本人の口から聞かなければ気持ちが収まらないことだと思います。

「…友達だと…思ってるけど…」

色々な選択肢がある中で、九条天が選び取った回答。それは"友達"という一言でした。あらかわいい。仲間とか、パートナーとか、信頼できる存在とか、大人びた言い方は色々あったろう中で、彼はあえて"友達"を選んだのです。

その言葉を改めて考えることもなく(恥ずかしそうに)即答できることが、何より彼の本心である確固たる証拠でしょう。

こんなことを面と向かってキラキラと言える人がいるとしたら、そいつは嘘をついているか謎の蕎麦屋かのどちらかだと思います。

「それが聞きたかった」

そして今の彼らに必要なのはその確認だけでした。

「お前が何を背負ってても、俺たちはTRIGGER。運命共同体だ」

大切なのは本人の気持ちだけ。彼が九条の意思を尊重することだけを考えたアイドルならば、違えるものもあったかもしれない。けれど「今までの九条天」が本物であることが確かなら、やることはこれからも変わらない。

「お前が伝説になるなら、俺たちが引き金になってやる。お前を守ってやる」

ただ1つ、自分たちが遂行すべきことが1つ増えただけの話。メンバーが成し遂げたい目的は、TRIGGERがチームとして共闘する理由にもなる。その意志を、八乙女楽は堂々と目の前の友に向けて放ちます。

「世界中巻き込んで暴れてやろうぜ!」

天がこの日まで彼らを避け続けていたのは恐らく、今回の件で2人が自分から離れて行くことを恐れたからでしょう。仕事にドライで完璧主義者の彼は、グループ外に個人的な目的を持っていた自分が許されるわけがないと、本気でそう考えるはずです。

ですがその読みは完全なる大外れ。楽と龍之介は、最初から彼のその目的をもTRIGGERに取り込むことを決めていたからです。

「…恥ずかしい男」

いつも通り悪態をつきながも、天はどこか嬉しそうで。何てことないかのように向き合ってくれる"友達"の姿に、この時の天がどれだけ救われたことでしょう。それぞれの意志を確認して、飲み込んで、彼らは改めてその絆を強固に結び直すことに成功しました。

いつだって必要なのはコミュニケーションで。勝手な想像と憶測で相手を避けて口を噤めば、余計に関係を悪化させる結果以外は生まれません。それが分かっていても人はその勇気を持てず、過ちを繰り返してしまうものだと思います。

その中で逃げずに意志を交わし合える者こそが、栄光を掴み取る資格がある。チームとして1+1+1を100にも1000にもできる可能性を持つのです。

「よっしゃ!行くぞ!TRIGGER!!」

目指すべきところは変わらない。最高の最上のアイドルを目指して、彼らTRIGGERはまだ見ぬ未来の果てを目指して飛び立ちます。来るべき日に引き金を引くのは自分たちであると、そう宣言するかのように。

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はつ

『超感想エンタミア』運営者。男性。美少女よりイケメンを好み、最近は主に女性向け作品の感想執筆を行っている。キャラの心情読解を得意とし、1人1人に公平に寄り添った感想で人気を博す。その熱量は初見やアニメオリジナル作品においても発揮され、某アニメでは監督から感謝のツイートを受け取ったことも。

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