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【超感想】『Fairy蘭丸』禁忌其の玖「冷淡」母の幸せ子供の幸せ "家族"を巡る熱き想いの果て

2021年6月10日

引用元:https://f-ran.jp/story09.html

1クールを起承転結に分けるのならば、「転」の最終話に当たるのが第9話。ストーリーも終盤戦の様相を呈してきます。

その大事な一回の当番を務めるのが、水潤族の清怜うるうくん。1周目とは順番を違え、4人目としての登場です。

うるう個人の物語としても『Fairy蘭丸』としても重要な内容が盛りだくさん。そんな禁忌其の玖「冷淡」を、今回もしっかりと読み解いて参ります。

清怜うるうの生き方

開幕からうるう母の首吊り自殺を見せられるという、大変にセンセーショナルな展開で幕を開けた第9話。今回は過去の物語でほのめかされていた、うるうの両親に存在する歪みの正体にいよいよ迫って行きます。

予想されていた通り、彼女は焔父と不貞の罪に走ったことが原因で命を落としていました。夭聖界では異種族間の性的接触は禁忌とされており、中でも(政軍分離の原則により)火焔と水潤の交配はご法度。その結果として、焔父は処刑の憂き目に遭ったようです。

にも関わらずうるう母が自ら命を断つことを選んだと考えると、彼女にかけられた罪はさほど大きくなかったのかもしれません。あくまでもうるう母は形式上「火焔族のならず者に誑かせられた被害者」であり、派閥争いに利用されただけだと処理されているのでしょう。

水潤族は高貴で清廉、夭聖界で誰よりも"正しさ"を遵守する一族でなければなりません。当然うるう母の犯した罪は、あってはならない一族の汚点に違いなく。故に彼女は「相手に騙されていた」ことになり、罪を償う資格さえ与えられなかった。そう解釈するのがベターです。

不幸な事故。彼女の意思と関係なく、その立場に在った故になるべくしてなった結末。少なくともうるうは父親からそう教え込まれており、その事実はうるうの心を強く縛り付ける枷となっているようでした。

政を取り仕切る以上、目の前にある事実と論理を覆すことなどあってはなりません。罪人は裁かれ、被害者が非業の死を遂げた。それが史実として残されているなら、あとは皆が"そうであった"と受け入れればこの一件は終了です。当人間の感情は些末事でしかない。それが大人のやり取りというものでしょう。

ですがうるうにとって、この一件はそれで済ませられるものではありません。うるうは物事のいろはも分からない幼少期の時分に、親の不貞行為を目の当たりにしてしまっています。それは大人が考えるよりもずっと、彼の心に深い傷を残したはずです。

子供にとっては、両親の情事を目撃すること自体が耐えがたい苦痛に他なりません。それどころか自分の大好きな母親が、父ではない人物と"男女"になっているところを目撃する。そんなもの、確実に一生ものの傷となると断言できる不幸です。

挙句うるうはそれを心に控えたままに時間を過ごし、それを近因として母親が自殺する現場にも立ち会うことになってしまいました。心に傷を負い、父親からは虐待紛いの教育を受け、"正しさ"を強いられながら人生の歪みを見せられる。それが幼少期のうるうに突き付けられた地獄の全てでした。さすがに人生ハードモード過ぎんか。

「…世界は、美しい」

学校でトップの成績を収め、画のコンクールでも最優秀賞を受賞するほどの努力を積んできたうるう。その喜びを母親に真っ先に報告しようとする度に、彼の前に不条理が突き付けられてきました。結局、うるうは母親に褒めてもらえることはあったのでしょうか?

今でも絵を描くことは続けていて、それは彼自身の心を落ち着ける1つの手段となっている様子です。ですが同時に絵を描くことは、あの母親のことを思い出して向き合う時間にもなってしまっています。

「僕は…正しい世界を守る」

正しくなかった母親の面影を追いかけて、正しい自分を練り上げていく。

清怜うるうはそうしてどこか自分に言い聞かせるように、自分に与えられた生き方を全うしようと努力しています。

うるうと"同じ"少女 美梨香

第9話でうるうが出会った美梨香は、うるうと同じく母親の不倫現場を目撃してしまった不幸な少女でした。

多感であり不倫の意味も理解できる年頃の彼女に、"母親の不倫"が与える衝撃の大きさは計り知れないものがあります。多くの恋愛関係を見知っていれば解釈の余地もありますが、彼女がそうであるとも決して思えません。

無感傷でモラハラ気質を持った父親に当てられたことで夫婦仲は冷め切っており、元々家族仲は良好とは決して言えない状態。

それだけでも心を痛めているのに、確実に関係性を破壊する母親の行動の証拠が加われば。心を平静に保つことなど到底不可能です。

美梨香はその原因は母親にあるのではなく、相手方の男 久二にあると完全に決めつけている様子です。久二さえいなくなれば、母親は元に戻って家族3人でまた平和な日常を送ることができる。そう信じているし、それこそが彼女が抱えている根源的な望みに他なりません。

実際に久二といる時の母親と、美梨香の母として立っている時の母親はもはや別人のようで。人生で母親としての側面のみを見てきた美梨香からすれば、「あいつのせいで母親がおかしくなってしまった」としか思えないのは至極当然と言えました。

本当はより複雑な事情があるものですが、それをあの年齢の女の子に想像しろというのは無理な話でしょう。そしてそれは彼女を前にしている、うるうにとっても同じことでした。

彼女と似たような境遇にあり、絵の才能を持っている点さえも同じくするうるうは、程なくして美梨香と打ち解けます。今回のうるうは愛著回収を目的として彼女に近付いたのではなく、個人として彼女の心に寄り添うことを選んだように見えました。

心の距離も相応に近く、十分に恋愛沙汰に発展してもおかしくない空気感を2人は放つようになります。自分が忌み嫌っていた焔と同じような流れで依頼人との時間を積み上げるうるうの姿からは、皮肉めいた人生の因果を感じざるを得ません。

母親が男に騙されている。
その美梨香が抱える苦しみを、うるうは誰よりもよく分かってあげられます。

自分の時はどうすることもできなかったけれど、今度はきっと何とかしてあげられる。

そんなエゴのようなものを滲ませながらも、愛著集めの任務をこなそうとする。そのうるうが持つ精神的な矛盾こそが、今回の物語を大きく動かしていくことになります。

誰が被害者で誰が加害者か

今回の物語において1つ押さえておかなければならないのが、美梨香母の不倫は劇中で決して正当化されてはいないということです。

家族に感情を向けない父親は"冷淡"ではあるものの、美梨香の帰りが遅いことを咎めるなど父親としての責務も果たしています。母親に対しても「専業主婦なんだから家のことくらいちゃんとしろよ」と小言を言う程度で、妻に何かを強制するきらいはありません。

つまり彼女は何となく"かわいそう"ではありますが、実はそれ以上の苦痛を与えられているわけではないのです。そして一度は今の伴侶を選んで結婚している以上、その対応を良いと思った時期もあるのでしょう。

そうである以上、現在の夫婦関係はどこまで行っても話し合いによって進展させなければなりません。しっかりとコミュニケーションを取った上で、改善及び決別などの結果を求めるべき。新しい恋愛は、その先において初めて行って良いことです。

それを怠ったまま不倫という手段に出て良い理由は一切なく、その一線を踏み越えないようにするのが良識です。

故にこのような問題において、相手の男の性質は言うほど関係がありません。相手がどんなに酷い人間であっても、もう片方が良識を持ち合わせていれば不倫には陥らないからです。そのような男に靡く時点で、受け取る側にも何かしらの問題があるのは間違いないでしょう。

特に今回の場合は「こんな夫では不倫したくもなるだろう」という同情票を得るにも弱く、実際問題「美梨香母が単純にだらしないだけ」とする方が明らかにしっくり来ます。それが美梨香目線では「ママがかわいそう」と見えているだけです。

残酷な物言いになってしまいますが、美梨香母が被害者であるとすることには無理があります。美梨香が母親のことが好きで、家族3人一緒に幸せに過ごしたいと思っているから、彼女のフィルターを通すとそのような解釈になってしまう。これこそが本質であり、現実です。

※補足

ですから今回の被害者は美梨香(と捉えようによっては父親)のみであり、美梨香母は冷静に分析すれば加害者側に属します。個人の主観による捉え方の差はあれど、彼女は決して救われる対象とは言えません。よって愛著の持ち主を打破したからと言って、母親が元に戻る保証も、幸せが訪れる保証もないのです。

特に今回の愛著はサブタイトルを参照するならばあくまで「冷淡」であり、「恋愛」でも「色欲」でもありません。母親を誑かして弄ぶその邪魂を標的とするのであれば、それを回収した先で何が起こるかには想像を及ばせる必要があったはず。

そういった事情を精査せずに、「美梨香が母親と久二が別れることを望んでいる」という表面的な望みだけを優先して心の救済に躍り出た。これは"正しさ"を追い求めるうるうにとっては、大きな過ちの1つと言えるものになってしまったのかもしれません。

「禁忌解放!愛!潤沢!
水潤の夭聖うるう、降臨!」

しかしその"正解"をうるうに要求するのは酷と言うものです。

同じような境遇で悲痛な目に遭った過去は、決して拭えるものではありません。必死にその感情を押し殺して自分を縛り上げ、"正しい"自分の形を作り上げて来た。だからこそそれをセーブし切れない状況に遭遇した時、理性的な判断が出来なくなってしまうものです。

「水はうつろう…。
形を変え揺らぐ、不安定な存在。
程良い量は命に恵みを与えるが、氾濫した時の被害は…甚大だ」

そのコントロールできなくなった激情の先で、うるうが描く未来。それがどのようなものになろうとも、きっとそれに意味はあると想いを馳せる。それくらいのことしか、今の我々にできることはありません。

うるうの閉ざされた心

うるうが辿り着いた心象世界は、美梨香と自身にとっての出会いの場。彼らが描き分けていた、公園のほとりをモチーフにした世界でした。

互いに互いの絵を褒め合い認め合った2人でしたが、その実、各々は自分の絵に納得ができないでいるところまでが共通しています。それは彼らが、自身しか知り得ない心の闇を自分の絵から幻視してしまうからなのでしょう。

それを知り得ない相手からすれば、その絵は非常に美しく清廉なものであると感じられる。むしろ、その闇を飲み込んでいることまで含めて、他人はその心を「清廉」と評価するのかもしれません。

ですがHEVEN空間ではその心の闇が形を成し、当人へと襲いかかります。心象世界には母を騙した憎き火焔の族長と、それに心奪われた母の姿がありました。

当然これは本人ではなく、うるうが抱えている心のイメージを邪魂が増幅したものです。焔の父が実際の性格とはかけ離れた夭聖となっているのがその証明ですが、それは母親もまたうるうのイメージの具現であるということにも繋がります。

つまりうるうのイメージでは、自身の母親は身をていして焔父を守るとするほどに彼のことを愛している…ことになっているようです。だとするとその認識は、うるうが父親から告げられて信じてきた事情とは大きく異なっています。

幼少期に見てしまった2人の情事は、うるうの目には騙されているようには映っていなかったのです。彼らは本気で互いのことを想い合い、事に及んでいるとうるうは認識してしまっていた。それこそが彼の心に隠されていた真実でした。

故にその歪みと一致する邪魂を持った久二の攻撃は、うるうから戦う意志を簡単に奪い去ってしまいます。久二の攻撃によって流される"熱いもの"は、ある意味でうるうが最も忌み嫌う概念でありながら、ある意味ではうるうが最も望んでいた経験をもたらすものだった。逝きかける彼の姿を見て、僕はそう解釈しました。

「――うるう!何をボケっとしている!!」

それを上からより熱いものでこじ開けて、真なる光を彼の心に降り注いだ者。

「どうして…!?」
「借りを返しに来ただけだ!早く!トドメを!!」

そんな救済者として、歩照瀬焔は彼の前に再び現れました。

「オン マヤルタ ハリキラ」

うるうの閉ざされた心の世界とされ、彼以外は誰も立ち入れないはずだった今回の空間。焔はそんなことをお構いなしと言わんばかりに、真上から急転直下でうるうの心に穴を空けました。

「心根解錠!」

それはうるうの持つ焔への執着が介入を良しとしてしまったのか。はたまた焔が彼の心の闇をものともしないほどに強力な熱量を持っていたのか。それは定かではありません。

「聖母被昇天!!」

ただ1つ確かなのは、この場においてそれを成し遂げてくれた歩照瀬焔という存在が、清怜うるうにとってより大きく重要な存在へと昇華したということでしょう。

今はまだ彼を好意的に見ることはきっと難しいとは思います。しかし憎まれ口を叩き合いながらも互いの窮地を救済し合った、その事実は彼らの関係を確実に1歩先のステージへと進めてくれるものなはずです。

「GO TO…
HEA―――――――VEN!!」

火焔族の族長は、自分の母親の敵である。自分たちの人生を狂わせた張本人であり、どこまで行ってもうるうにとっては憎むべき仇敵にか変わりないのかもしれません。

ただし今共に歩むべき仲間となった焔は、その本人ではない。火焔族に属し憎き敵と血縁を持つ者であっても、そこに宿る魂は族長とは全くの別人に他ならないのです。

それをうるうが本当の意味で認識できた時、彼らはどこか通じ合った友になれるような、そんな可能性を感じる一幕。それが今回の戦いの中には存在していたと思います。

水潤と火焔 うるうと焔

愛著の回収を終えて、美梨香の家へと向かったうるう。彼を待ち受けていたのは、想像だにしていなかった痛烈な現実でした。

邪魂を祓われた久二は美梨香の願い通り母親との別れを選択。しかしそれを「捨てられた」と解釈した彼女は、絶望から自らの命を断つことを選んでしまいました。

久二を遠ざけても美梨香たちに家族円満な生活は戻ってくることはなく、むしろその状況は悪化したとさえ言えるでしょう。美梨香は大好きだった母を失い、父親は妻を軽蔑してその事故をなかったことにしようと振る舞います。その一部始終で、美梨香がより大きな心の傷を負わないわけがありません。

一方の久二は愛著を祓われても大きな罰を受けることはなく、新しい若い女性を捕まえてそれなりに楽しくやっているようでした。ぱおーん。回収された愛著の性質を考えると、「美梨香母との関係が終わることが罰であった」と捉えても良いのかもしれません。

そしてここまでの全話を総合して見て行くと、実はうるうにだけ「愛著回収後に邪魂の持ち主が不幸になっていない」という特徴があります。第3話では2つの愛著を回収しながらも、双方とも違う形で前向きな人生を進める結末を導いていました。

もちろん、たまたまそうなっている可能性も否定はできません。ですがもし夭聖たちにその後の報いをある程度コントロールできる(推察してケアできる)のであれば、うるうは意図的に誰も不幸にならない未来を目指して行動しているとも考えられます。

第3話ではうるうは全ての人を前向きにさせることに成功しています。自分だけは戒律を破って罰を受け、心の傷を抉られることになりましたが、そのおかげで周りの人たちは救われていたのです。それをもって、うるうは自分の自己肯定感を満たしてもいたのかもしれません。

「道から外れ、誰かを傷付けても、
幸せは気まぐれに降り注ぐ
…なんと悲しい世界だ」

しかし今回は愛著を回収したことで、依頼人の母親が自害することに。依頼人の望みを叶えるという"正しい"行いをした結果、彼女の元により大きな不幸を与えることになってしまった。さらにあろうことか、邪魂の持ち主だけはのうのうと新しい人生を歩んでいる。

今回の物語においては、うるうはそんな「最もあってはならない結末」に辿り着くことになりました。正しいことを積み重ねたはずなのに、最後に残った成果は紛れもなく"過ち"と言えるもの。人生では、そういった不条理に苛まれることも少なくありません。

さらに言えばうるうにとって今回の仕事は、自分が描けなかった正しい結末を得るための戦いでもありました。このように対応すれば同じ過ちが繰り返されることはないだろう。そう信じて美梨香を救済した結果、現実には近しい不幸が再現されただけでした。結果だけ見れば、より悪い場所に着地したとさえ言えます。

うるうは何も悪くありません。第3話同様に依頼人の望みを叶え、愛著を回収して事なきを得た。それがクリアできていれば、仕事上の"ミス"とは言えないでしょうから。

ただし「信じていたものが正しくなかった」ことを目の前に突き付けられて、"正しさ"が"過ち"を導いてしまった現実を流し込まれて。人生単位での「失敗」とも言える結果だけが残ったことは、うるうの心を強く激しく苛んだに違いありません。

それはそのまま、うるうの現在の心境を大きく揺るがすことに繋がっていて。激動する感情は、今までは考えられないような行動を彼に取らせることになります。

熱い……

現状に耐えられなくなった焔は、自身が助け、自身を助けられた因縁の相手。歩照瀬焔の元を訪れていました。

憎き火焔族の夭聖。自分の家族を破壊し、母親を口車に乗せ、死に追いやった族長の息子。

憎悪せねばならない。遠ざけなければならない。
そう思えば思うほどに彼を意識してしまって、よりその心の本質に近付きたくなってしまう。

「…母は笑顔で死んでいった」

それはうるうが自分に架した"正しさ"によって、蓋をして閉ざしていた1つの事実が存在しているせいでした。

「――とても安らかな笑顔だったんだ」

火焔のならず者に騙され、利用されて。失意のままに自死を選んだはずの母親は、まるでその結末を受け入れたかのような表情で最期の時を迎えていた。

真実が言われていた通りのものであるのならば、母親はこの世を憎み周りを怨んで死んでいったに違いなく。望まぬ現実に打ちひしがれて、歪み切った顔と凄惨な姿を晒していた方が辻褄が合うというものです。

だからその表情が何を意味しているのか、うるうには分かりませんでした。いえ、それを「考えないようにしていた」という方が正確なのかもしれません。

彼が"正しい"自分でい続けるためには、その情報はあまりにも大きなノイズとなり得るものです。仮にその中身を紐解いたところで、彼に幸せが訪れるわけもなく。ただただ信じたくない現実が、目の前に展開されることになったでしょう。

故に父から告げられた内容を真実として、火焔を怨み続けた方がうるうにとっても楽でした。そうであってほしいと願って、自分を"正しさ"で雁字搦めにする。その方が、清廉に生きて行くためには都合がよかったはずです。

それを今回の一件が、残酷にもうるうの閉ざしていた心の闇を解放してしまいました。美梨香母の選択は、自身の母にも通じるものだったからです。

騙されて不幸な目に遭っているはずなのに、本当は自分の方から相手のことを強く求めている。それを奪われる絶望の方がずっとずっと大きいのだと、美梨香母は行動によってその想いの強さを発露しました。

もしかすると、自分の母もそうだったのかもしれない。首を吊って項垂れる母親の安らかな表情は、それだけ本気で相手のことを想っていたという証明だったのかもしれない。

本当は騙されてなどいなくて、否、騙されていたとしても「それでも良い」と思えるほどに相手のことを愛していた。どれだけ散々な目に遭っても、また懲りずに恋をしてしまう。母もまたそんな因果に縛られ続けていただけの、愚かな夭聖だったのかもしれない。

その気付きは、うるうの心を必然的に焔の元へと運ばせました。

焔は以前、父が処刑されたことについて「父は何も悪いことはしていない」と言い切っています。その回答はうるうには到底納得できるものではなかったとは言え、こうなってしまえば話はまた変わってくるはずです。

その中身を知ったところで、うるうの心が救われることはありません。それどころか、もっと深い傷を心に刻まれる可能性だって存在します。それでも今はもう、その事情を確認しないわけには行かないのではないかと思います。

人前で泣くことはないと断言した彼が、堪えきれない涙を流しながら。

目の前の憎き相手に、"母親"の話をぶつけて行きます。

焔は2人の間にある事情のほぼ全てを理解していない状態で、うるうはそれを理解していたはずです。ですからまずはうるうが知っていることを焔に伝えなければ、正しいコミュニケーションは取れません。

その前提を飛ばして母と自分の想いを伝えることは、会話が成立しない"正しくない"やり取りです。そんなことも分からなくなるくらい、この時のうるうは思い詰めていて。感情優先の行動を取ってしまっていたということなのでしょう。

「つれぇことがあるなら、思いっきり泣けば良いじゃねえか」

ただ、その"正しくない"不成立な会話があるから、成立し得る関係性というものもあります。

しっかり筋道を立てて話をしていたら、2人はそのままぶつかり合って取り返しのつかない結末を描いたかもしれません。ですがうるうの揺れ動いた感情は、その不幸をギリギリのところで回避させました。

言えないことが、言いたくないことがあるのなら、無理にそれを話さなくても良い。理由は分からなくとも、その人が「辛いこと」は伝わるから。自分はその心を抱き寄せて、ただただ冷え切った心を温めてやるだけのこと。

難しく考えない焔だからこそ、事情や事実よりも感情を優先して相手の立場を慮ってあげられます。こういう時に何をすべきかなのか。その真の正義の在り方を、焔は尊敬する父から教わっていたのですから。

「――熱い……」

まだまだ問題は山積みで、その全てが理想的な解決に結びつくとは限りません。それでもこうして心を通わせた事実とそこに宿る感情は、新しい火焔と水潤の関係性を築き上げる希望となると信じたい。

明るい未来とは、得てしてたった1つの交流によって齎されるものだから。この2人の時間がその礎となることに、今は期待を持っても良いのではないでしょうか。

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はつ

『超感想エンタミア』運営者。男性。美少女よりイケメンを好み、最近は主に女性向け作品の感想執筆を行っている。キャラの心情読解を得意とし、1人1人に公平に寄り添った感想で人気を博す。その熱量は初見やアニメオリジナル作品においても発揮され、某アニメでは監督から感謝のツイートを受け取ったことも。

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